33話 ページ33
五条サイド
電話の切れた暗い画面には大人になった自分の顔。そうか。こんなにも月日が経ったのか。
「そんな感じしないね。あいつが結婚なんて尚更…」
彼女の相手をすると高専時代の自分に戻るような気がする。実際彼女に対して口が悪くなるのもメッセージを見返せば一目瞭然。
「相変わらず僕…俺はAの前じゃ素直になれないな」
高専を退学した後で最愛の相手を見つけた彼女が結婚するという事実に
ショックを受けている自分に呆れる。
鈍感だった高専時代には気付かなかった彼女に抱いていた恋心。それが数十年経った今でも残っていたというのか…
そもそも俺が一番に望んでいたのは彼女の幸せ。知らない誰かと結婚で叶うならそれでいい。そう割り切るべき。
だが、結局呪いを祓うことを口実に彼女に会う約束をつけてしまった。
「我ながらに未練がましくてウケる」
でもそれぐらい彼女がどんな姿になったのか気になって、幸せな顔してないと許せないんだよ。
高専での別れ際に彼女の肩についていた呪い。そのおかげで口実ができたわけか。たしか気持ち悪い呪霊だったな と浮かべれば何故か懐かしい人物、傑の姿が頭をよぎった。
「(これから先、ある時、ある瞬間に心の底から愛せるよ)」
いつの日だったか、彼女をどう思っているかと尋ねた時に返ってきたその言葉。
…そういえば、その時の傑は既に俺の前に高専を去る彼女に別れを告げたと言っていた。
俺たちが大喧嘩する前、俺がその場にいなかった空白の時間、傑と彼女だけの二人だけの時に。
「あれ…」
思い返せばそこから彼女の肩に呪霊がついていた。
…もしも、その呪霊は傑がつけたものだったのなら、
呪力のないやつは猿同然だと非術師を虐殺し高専を去った傑はAも殺しの対象だ。よく考えれば放っておくはずがないんだ。
ならある時、ある瞬間に愛せるとかほざいていたのは猿(非術師)でなくなった時であって、傑は高専時から
「Aを殺すつもりでいたのか…ッ…?」
その殺意があの肩についている呪霊によって今日、結婚式にでも実行されたら…って考えすぎだろ。んなわけないと言い切れ…ない。
「クッソ…ッ!!」
いつのまにか足は地面を蹴って駆け出していた。
考えすぎなのかもしれない。だが一度考え出したら漠然とした胸騒ぎが止まらない。
何度も彼女に電話をかけ直すものの出ることはなく、それがまた気持ちを焦らせて
乱暴に目隠しをとっては、目を見開いた。
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Omiso(プロフ) - てんぎつね。さん» コメントありがとうございます。そう言われて実際自分でやってみたんですけど想像以上に痛いですね(笑) (2021年7月28日 23時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
てんぎつね。 - いや親指は反り返したら痛い (2021年7月28日 23時) (レス) id: 04fcd4138c (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - るりさん» るり様、コメントありがとうございます!貴方様のお言葉に嬉しさで胸がいっぱいです!そして、貴方様の作品を読ませて頂いております。今後の更新楽しみにしています!応援ありがとうございます!貴方様にも私からのエールを。 (2021年6月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
るり(プロフ) - 最高な作品をありがとうございます。ほんとにその場にいるような臨場感や、細かく描かれる表現方法であっというまに読んでしまいました。これからも作品楽しみにしています! (2021年6月5日 11時) (レス) id: 82fe86bccf (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - 緑の白猫さん» コメントありがとうございます!読者様がゾクゾクするようなホラー×ヤンデレを感じて頂けていたらと思います!夏油の術式を上手く活かせることを目的にしていたので貴方様の褒め言葉本当に嬉しく思います!最後まで読んで下さりありがとうございました! (2021年4月5日 14時) (レス) id: 00c4677ab1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2020年12月17日 19時