38話 ページ39
「(真っ赤なパーティーを)」
といったあの女の人の言葉の意味がやっと今、分かった気がする。
あの女の人は、私が目の前いる彼を刺すことを見越していたんだ。
だけど、それも全て幻というのなら私がこの人を刺したという事実は実際になかったことになるんじゃ…
…いや、そうであったとしても私は幻の中で一線を超えてしまった。
殺意を持って人を殺そうとしたことには変わりない。
ナイフを握りしめた恐怖も、肉を切り裂き刺した感触もこの手が全て覚えている。
カタカタと震え、青ざめる私にそっと彼が近づく。
「震えて可哀想に。お前は殺人という凶悪な罪の一線を超えちゃったもんなァ。その一部分を両親は見ていたし、さっきの親の怒鳴り声や罵倒は幻ではなくて現実だ」
両親の私への様々な拒絶の言葉は幻じゃなくて現実…
「〜ッ…なら私には…帰る場所も愛してくれる家族ももういないの?…何も残ってないの?」
「そうだよ。お前は何も残っちゃいない。もう帰る居場所もどこにもない。親によって警察に通報されて一生ヴィランとして追い続けられて、元の生活には戻れないんだよ」
希望も未来も何もかも真っ暗になって見えやしない。
一時の感情がこんなにも人生の運命を左右する。
いや…そもそも刺激を求めていたあの頃から私の運命は決まっていたのかもしれない。
「けどな、A。これでお前はやっと俺と同じになれたんだ。同じヴィランとして世間から嫌われる存在になろうと、両親がお前を見捨てようとも俺が側にいてやるよ」
そういって震える私の手に指を絡めて、まるで恋人のように 愛してる と告げる目の前の彼。
そんな彼に、目をつけられてた時点で私は既に過ちを犯していたんだ。
日々の幸せにありがたみも感じずにのうのうと生きていたこと。
平凡な日常を当たり前だと考えていたこと。
何事もなく暮らせることに満足しなかったことが全て嘲笑うかのように返ってきた。
望んでいた非日常は暗いくらい闇の中。
私はただこの人とずっと隣で生きていくしかないのだろうか……
「 ようこそ、非日常が溢れたヴィラン側へ 」
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Omiso(プロフ) - ゆりさん» そして楽しみにしてくださっていたこと深く心から謝罪します。また、ヒロアカの作品を書く機会があれば是非その作品を楽しんで読んでいただけたらと思います。 (2020年6月27日 15時) (レス) id: 47426ab442 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - ゆりさん» 突然ですが、次回作のリクエストについてお伝えしたいことがありここでコメントさせていただきます。次回作についてですが、ヒロアカではなく他のもので書きたいものができてしまい違う作品を書くことにしました。リクエストに応えられないことをご了承ください。 (2020年6月27日 15時) (レス) id: 47426ab442 (このIDを非表示/違反報告)
Omiso(プロフ) - りんさん» 最後まで読んでいただきありがとうございました!ゾワッとする場面が貴方様にとって作品の面白さになれていたこと本当に嬉しく思います!実は言うとバットエンドが好みでして…貴方様にはお見通しでしたか(笑)本当に最後までありがとうございました!! (2020年6月7日 9時) (レス) id: 47426ab442 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 完結おめでとうございます!ゾワっとする場面が多かったですがそこがまたこの作品の面白さで、とっても面白かったです!!!バッドエンドなのもOmisoさんらしさが出ていて私はすごく好きでした!最後まで本当にお疲れ様でした! (2020年6月7日 9時) (レス) id: 8a717e60ef (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - Omisoさん» 楽しみにしています!! (2020年6月6日 22時) (レス) id: ea414cb9ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Omiso | 作成日時:2020年5月4日 22時