幸運を運びし子 ページ12
｢おや、今日もやってきたね？｣
一目見ただけであれば、誰もが女性と見紛うような美しい黒髪。
やや小柄の体に、白いTシャツと灰色のショートパンツが可愛らしい少年……ハンリツ キサトくんだ。
｢あ、あの！いつものお菓子、ありますか？｣
いつもおどおどしている彼だが、彼を守護するような異常なまでの強運は、私の予想を大いに裏切っていた。
｢ああ、あるよ？今日はちょっと試しにラングドシャクッキーという、…かなりホロホロとしているクッキーも作ったのだけど…食べたいかい？｣
｢！！やったあ…！｣
嬉しそうに、キサトくんは手を洗いに行く。
彼は、樹木医師団の見習い。まだ入ってきたばかりの新人なのだ。まだすこし緊張が抜けていないような気もするが、きっと彼がいれば樹木医師団も大いに戦力が高まるだろう。
｢キサトくん、紅茶とミルク、どっちにするかい？｣
｢えっ、じゃあ…ミルクティーがいいです｣
｢ふふっ、任せておくれ｣
時には、こうした欲張りとも思える選択は必要なのだ。彼の選択は、正しい。
ただしお菓子が甘いから砂糖は入れないよ。なんてちょっと笑ってみせると、キサトくんは私の倍くらい破顔して見せて、嬉しそうにしてくれた。
｢ジャレッドさん、すごいや…！｣
｢いや、私なんてまだまださ。医師団長のように医療の心得もないし、アグノマギアや少年隊の子達のような戦いの力もないから｣
｢そんな事……ないですって！｣
彼が、首を横に振る。
｢ジャレッドさんが話すことで誰かが救われてると、…僕は思ってます！まだ新人だけど……本当に、流石の最年長だな…とか、大人ってこんなにかっこいいんだなとか思います｣
うーむ…大人、か。私は、思わず考えてしまった。
果たして、私が大人としてしてきたことは正しいのか。魔法使いに襲われれば、恐らくは生きられない。戦えないから、戦うことをしてこなかったから、私はその償いをするように、こうして誰かにお菓子を振舞ってしまったり世話をしてしまうのだろう。
これが罪をあがなうための行いなのだとしたら、何故私はこうして、この子の言葉を享受しているのだろう？
思考を巡らせていると、肩を揺さぶられる感覚で現実に引き戻された。
｢ジャレッドさん…っ！！大丈夫ですか？！｣
心配なのか、少し顔が青ざめているようにも見えた。キサトくんには悪いことをしたな。気を取り直して、私は紅茶を淹れに行った。
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アトランティス(プロフ) - 初めまして、見させて頂いてます。ジャレットおじさま...？(混乱中)うちの子が出るなら甘い物を貰いに来そうだな...()更新楽しみに待ってます！ (2019年7月28日 23時) (
レス) id: a0fd450377 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋状 - 十六夜月姫さん» 更新頑張って下さい！こちらもおじさまを借りるときがいつか来るので、そのときもよろしくお願いします！(予告) (2019年7月28日 19時) (レス) id: f31ca4f391 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 螺旋状さん» こちらこそありがとうございます…！おっさんはこれからもこうして悩みながらの生活をしますがよろしくお願いします…！ (2019年7月26日 20時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
螺旋状 - え、あ、え、うちの貴智くんが...？（混乱）お借りしたのを確認しました！おじさまカッコいいです(・−・ )。続きを楽しみにしています！使っていただきありがとうございました(*´▽｀*) (2019年7月26日 19時) (レス) id: f31ca4f391 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十六夜月姫 | 作成日時：2019年7月19日 21時
