空白が四十六。 ページ47
「...!これ」
「怒ってなんかないよ、寧ろ感謝してる」
驚きで目を見開いた侭硬直したA。
掌にあったのは、あの時と同じ銘柄の飴。それをまた胸の前で強く握って、笑った。
「有難う、」
Aははにかんで笑った後、はっと我に返るような表情に変わった。
「そう云えば、時計がないの。大切なものだったのに」
敦はそれを聞いて、先程のマルセル・プルーストのことを思い出した。
彼は時間愛者だったと云う。Aの時計も、若しかしたら彼奴が持っていったのかもしれない。
「...何かの罰なのかもね」
すると、時計のあった腕をもう片方の手で物寂しそうに掴みながら、感傷的に笑った。
__「だから屹度、罰を受けるの」
「...なら僕も一緒に罰を受けるよ」
「二人なら乗り越えていけるよ」
時計のあった腕を掴むAの片腕を離して、両手で握る。
まだ飴を握っている手だった。
「...あはは、こんなに久し振りなのに」
Aは知らない。
自分がどれだけ敦の為に体を、心を削ったか。
仕舞いには自分の命までも犠牲にした。
それでもいい。敦が知っているから。
「でも、そうだね。そんな気がする」
ないものならば、焦って探す必要も無い。
もし見つけたら、拾えばいいだけの話だ。
空白は雲にでもなったのだ。
事実が幾つあろうとも、全ては空が包む地球であったことなのだから。
空は雲一つない快晴。
ただ、それだけ。
__空白にもなり得ない世界の話。fin,
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←空白が四十五。
26人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年9月8日 13時