空白が四つ。 ページ5
無言で歩くというのは立場があっても気まずくなるもので。
「あの、本日は探偵社に向かわれると云うことですが、何があったのか聞いても?」
地図は交番を出た時からAの手にあった。
聞くと、その女性は暫く考えてから、口を開いた。只の探偵社ではなく、武装探偵社なだけで只事ではないことは判る。
そこまで判ったのならAは聞かずにはいられなかった。
「...殺されたのよ。」
「え、」
「夫が殺されたの。」
もう一度、ゆっくりと云う。
口に出すのだけでも辛い筈なのに、この人の表情は余り変わっていないのはもう吹っ切れたからか、隠しているだけか。
「...変なこと聞いちゃって、御免なさい」
「いいのよ、結構前のことだし。軍警にも云ったんだけど、未だ解明されずに捜査は打ち切り。探偵社しか頼りがないのよ」
矢張りもう吹っ切れていたらしい。
道は路地に差し掛かっていた。歩く中で今のところ気配は無い。
「失礼ですが、ご自宅はどちらで...?」
「家は東京の方よ。元々は横浜に住んでいたんだけど、夫が死んでからは移ったわ。」
それだけ聞いて、そうですか、と他人行儀に云う。
只の世間話の延長。でもそれが、鍵になる時もある。
26人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるくてぃー | 作成日時:2019年9月8日 13時