【文豪ストレイドッグス】空白にもなり得ない世界の話。 (ページ21)

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空白が二十。ページ21

「Aさん！無事ですか！？」

大分焦燥した様子の樋口を見遣り、安心させるように微笑んで「私は平気ですよ」と云う。銀も表情と口には出さないが安心しているように見えた。

「却説...帰りましょう」

「え！？でもAさん、探偵社員は一人ですよ！勝算なら...」

「いいえ樋口さん。一人では無いようです。無理な衝突は避けた方がいい」

無理な衝突はしない。Aが根っからのポートマフィアの人間だったなら、戦っただろう。でも、完全に勝てる訳でもないのに挑むのは、Aの目的にとって不合理だった。

「それでは、また何処かで」

探偵社員の顔と、最後に奥さんの顔を見て、その場を後にした。

ポートマフィア執務室にて、Aは一枚の紙切れを睨んでいた。

折り畳まれた紙は何回も手に取ったせいでお世辞にも綺麗とは云えない状態だ。

そこには、任務でくすねた『黒虎』についての情報が書いてあった。

それから一時間後。

「中原幹部、此処の葡萄酒美味しいですね」

Aは夕餉を中也と共にしていた。

ばったり会った時に用件を話そうと思ったのだが、忙しかった中也が夜に話すと約束付けたからだ。