【文豪ストレイドッグス】空白にもなり得ない世界の話。 (ページ13)

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空白が十二。ページ13

「ふむ、良いだろう。君は遊撃隊に入ってもらう。まあ大体のことは君の先輩が教えてくれるさ」

にっこりと人当たりの良い笑みを浮かべて彼が云った言葉が頭の中で反芻する。

遊撃隊なるものがどんな隊なのかは知らないが、そこで上手くやろうと決意した。上手くやれるかではない。やらなければならないのだ。

お礼を込めて頭を垂れると、また上から声がした。

「一つ、質問していいかい？」

Aが首を傾げる。

「君の異能力を教えて欲しい」

心臓が止まる感覚。

撃ち殺された錯覚がした。閑散とした部屋に静寂が響く。乾いた喉のまま口を開いて、この冷や汗がばれないように早く返そうとする。

「...時空操作です」

これ以上聞かれるのは拙い、と拳を握り締めた。それでも森の声は止まらなかった。

「では君の...」

「お言葉ですが。先程質問は一つと仰りました。失礼します」

反論を許さずに早足で部屋を出る。扉まで歩く足の感覚が無かった。

本当ならここで殺されても可笑しくないのだ。まだ生き延びているのは、中原中也が云っていた、悪運というやつだろうか。

震える手をもう片方の手で無理矢理押し込んだ。