【転スラ】転生したら、まず夢を疑いました。

2【スライムの。2】 ページ3

…は？

え、待って。待って待って。

…今の何？
今の音は何！？

突然すぎて、本当に突然すぎて
私の身体はピシリと、音まではさすがに出ないけれど、まるでそんな風に固まって動かなかった。


あたりは、ぽたぽたという水滴の落ちる音だけが響く。
薄暗い洞窟の、天井から落ちる、水滴の音。
他は、先程よりも嫌に静かだった。


…今の今まで、あんな目立った音はしなかった。

…ゴクリ。唾を飲む音が、先程よりも嫌に大きく聞こえた。


れ、冷静に考えよう。
ほら、ここは洞窟だ。
きっと何かが湖に落ちたのだろう。

…"何か"が。


…。

…。


…自分で考えて、とても怖くなってきた。


とりあえず、あの、何かが落ちる音がしてから、他の物音は何一つしていない。

多分、小石か何かが湖に落ちたんだろう。
うん、きっとそうだ。

私はまたため息をつこうとして、嫌、つこうとしたが、つけなかった。

ポタッと水滴が、落ちた。私の頭の上に。


『き、ぎゃぁぁぁぁぁああああ！！！』


…ハッとした。
叫んでしまってすぐ、口を両の手で覆う。

いやいやいやいや、
びっっっくりした………！！！

今のはない…！今のは怖い…！

めちゃくちゃ叫んじゃったけど、なんか危ない生き物とか寄ってこないよね…！？
反応しないよね…？
大丈夫だよ…ね？

すごい冷や汗が出てくる。
どこぞのホラー小説でも読んでいる気分だ。
そう、まるでその主人公に成り代わったかのごとく。



…え？待って。何それ。
それじゃまるで、"私が何かの物語にトリップ"でもしてるような、そんな感じに聞こえる。


えー…。

なんだろう、この違和感。
なんだろう、この胸騒ぎ。

私って、どうしてここにいるんだっけ…？



え、それ以前に
私って誰だっけ？

名前が、思い出せない。

家族は？住んでるとこは？
あれ？なんで洞窟にいるの？



…ダメだ。思い出せない。

せめて、学生とか、社会人とか。そういった肩書きというか職業というかはなかっただろうか？

…いや、待て。

…そもそも学生とか社会人とかってなんだ。
さらっと単語が出てきたのなら、その単語が意味するものくらいわかるだろうに。

なんでだろう。何も、わからない。



ポタッポタリ。

また洞窟の天井から水滴が落ちた音がした。

真上を見上げると、今にでも落ちてきそうな水滴が、ゴツゴツとした岩肌にしがみついているところだった。

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