閑話 ページ10
目が覚める。
すっかり日は暮れてしまっていて、月明かりが部屋に差し込んでいる。厨の方から誰かの怒鳴り声が聞こえた。つまみ食いをした者でもいるのだろうか。
まだ若干気怠さの残る上体を布団から起こし、はたと小夜は気がついた。先程の出陣で負った傷がすっかり治ってしまっている。壁に掛かった時計を確認してみても手入れ部屋に担ぎ込まれてからまだ3時間と経っていない。普段ならば半日は寝ていないと治らないほどの重傷だったというのに。
手伝い札も使っていないのにこんなに早く回復するなんて、とそこまで考えて、演練で他所の本丸の刀剣男士に｢そんなに手入れに時間がかかるのか！？｣と驚かれたことを思い出す。
審神者が常駐している本丸ならば、霊力やらなんやらの関係で少なくとも小夜たちの本丸ほど手入れの時間はかからないらしい。
もしかして、あの出来事は夢ではなくて現実だったのだろうか。ぼんやりした頭の中で小夜は記憶を手繰り寄せる。
突然現れた主を名乗る少女は、一度瞬きした間に消えてしまった。そのあと布団に戻った所までは覚えている。
……俄に信じ難い話ではあるが、彼女は確かに聞き慣れた優しい声をしていた。主がいたから手入れ時間が短縮されたと考えれば、なるほどこの状況にも納得がいく。
数日前に泣きながら｢主に会った｣と触れ回っていた清光の姿を小夜は急に思い出した。あの時はまさかそんなことが、と信じられない心地でいたけれど案外本当のことだったらしい。
｢私の、刀剣男士｣
小夜は小さく反芻する。
すとんと胸の中に落ちてきたその言葉を、今思えばずっと求めていたようだ。
認めて欲しかったのだ、ずっとずっと。過去も今も全部引っ括めて自分だと、“あの人の刀剣男士“だと、そう言って欲しかった。
泣きそうな顔であの人は謝っていたけれど、とんでもないことだ。自分でも気が付かないまま奥底に眠っていた願い事を、たった二言三言で掬いあげて叶えてしまったのだから、むしろ賞賛されて然るべきだろう。
心臓の辺りがふっとあたたかくなる。不思議な高揚感と充足感とで息が詰まりそうだ。
(……もし二度と会えなかったとしても、今日の思い出だけで十分だ)
心の底から、小夜はそう思えた。
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ミミミ(プロフ) - こだぬきさん» ありがとうございます！こだぬきさんの元にもこだぬきさんの刀剣男士たちが訪れますよう願っております、私もいつか彼らとお話してみたいです(*´`)ゆっくり更新ですがゆるりとお待ち頂けると嬉しく思います。 (2019年5月2日 22時) (
レス) id: 8134640c57 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして！お話読ませて頂きました！私も実際に夢でもいいから自分の刀剣達に会いたいです…(*´ω｀*)これからも応援させて頂きます！また遊びに来させて頂きます！ (2019年5月1日 16時) (レス) id: 680cc78f50 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミミミ | 作成日時：2018年12月2日 16時
