優しい筈の人 ページ1
「お前、変わってるな」
同僚の男がそう言うので、Aは曖昧な笑みを零す。少女はつい先日、自分から熱心に志願して散兵の部下になったのだ。元々なりたがる人間が少ないのもあって、そんなに散兵がいいならと押し込まれるようにして目通りをかなえた先刻のことを思い返す。
(……覚えてくれてはいなかった。)
彼女はファデュイの一員になるずっと前に、散兵に会ったことがあった。冬空の下、親とはぐれて泣きじゃくっていた幼い自分の手を引いて、大丈夫、すぐに見つかるさと優しく声をかけてくれた、あの少年。彼は間違いなく自分が仕える散兵その人だった。
残念というか、なんというか、彼は自分のことを見ても懐かしむ素振りすらなかった。たった数十分のそのできごとを、ましてその時手を引いた幼い子供のことなどああ確かに覚えているはずがないよなあと、期待していた自分が恥ずかしくなる。
それに、そう。噂には聞いていたが、記憶にある優しい笑顔とは似ても似つかない酷薄な顔に、だいぶショックを受けてしまった自覚はあった。
同僚と別れ、とぼとぼと帰路を歩く。今日は本当に顔を合わせるだけだったので、特に何か話せはしなかった。仮にそうでなかったとして昔助けていただいた女の子です、なんて言おうものならきっとありもしない思い出話をしろと言った覚えはないと怒られるだろう。……もし覚えていたとして、だからといって自分に何ができただろうか。ただ恩返しに来ただけなのだから、何かを期待してこんな風にがっかりするのはおかしいことくらい少女にもわかっている。
はあと少女は重々しく息を吐いた。
「やあ、僕の部下になれた幸運なきみ。そんなに不幸そうにため息を吐くなんて、一体どうしたんだい？」
「！」
刺々しい言葉が背中から吐きかけられ、やや曲がっていた背を正して少女は振り向く。そこにはたった今少女の頭の中を埋めていた少年その人が立っていた。彼は相変わらず感情の乗らない笑顔を浮かべている。慌ててその場に膝をつこうとした彼女を手で制し、スカラマシュは首を傾げた。
「もしかして僕の下に着くのが不満なのかな？」
「まさか！そんなはずありません！」
咄嗟に食い気味に否定をしたAは、ハッと我に返り顔を赤く染めると俯く。そんな彼女のつむじを眺めながら、スカラマシュはふーん、と声を漏らした。
「もしかして、きみ……」
スカラマシュの足先が俯いた彼女の目に写る。
「僕のこと好きなの？」
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さてら(プロフ) - スカラマシュの無理矢理感がどちゃ好みです、!!!続きお待ちしておりますね!! (2022年7月15日 7時) (
レス) @page6 id: 2f7de286bf (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - 夏葵さん» ありがとうございます〜！！！少しずつ書いていくつもりなので、ゆっくりお待ちいただけると幸いです！ (2022年4月18日 1時) (レス) id: 926aff9fe8 (このIDを非表示/違反報告)
夏葵(プロフ) - まだ少ししか話数ないですが、とても続きが気になるくらいドキドキしながら読んでいました！続き楽しみに待ってます〜！ (2022年4月16日 2時) (レス) @page4 id: 8ae4d54864 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みかん | 作成日時：2022年3月23日 14時
