結晶が二十三つ ページ25
今日はひとらんさんと共に植物や動物について学ぶ日だ。恐らく見たことも無いものが見れるのだろうと、私は自然と心躍らせながら教えられた裏庭へと向かう。
Ht「あ、来た。こっちおいで。」
見るとひとらんさんはいつも来ている白の軍服ではなく、ツナギに白のタンクトップという格好であった。
『こんにちは。何してたんですか?』
Ht「ちょっと畑耕してた。夏野菜でも植えようかと思ってね。」
『野菜…』
そういえば野菜って土から採れるんだった。あの小さな種から大きな実がなると考えると、植物とはやはり偉大なところがある。
Ht「さ、これは置いといて。君に見せたいものがあるんだよね。」
『?』
ひとらんさんに連れられて来たのは、裏庭のさらに奥の方にある、花壇、だった。
『わ…綺麗。』
色とりどりの花が咲いていて、それが風に揺らめきサラサラと音が聞こえる。
Ht「凄いでしょ。少しづつ小さな花壇から大きくしてっていつの間にかデカい花壇になってたんだよね。今は春の終わりくらいだから、アネモネが満開だ。」
ひとらんさんはひとつのアネモネを手で優しく撫でて、微笑んだ。私も自分の鋭利な手で手折らぬようにそっと触ってみる。
『柔らかい…』
花びらはやはり柔らかい。しかも綺麗で、私はこれらも時期を終えれば枯れるのかな…と思いながら、なんとなく手のひらで結晶をパキパキと生み出し、アネモネの形に生成してみた。
しかし、複雑な形のせいで少し歪な形だ。そんな私を見たひとらんさんは目を爛々と輝かせていることに気づく。
Ht「Aってそんなこともできるの?ペ神から結晶を操れるとは聞いてたけど…花の形にもできるんだ。」
『…でも歪になってしまいました。もう少し練習が必要ですね。』
Ht「それでも凄いじゃん!結晶の花なんて枯れることもないから贈り物には最適じゃない?」
『贈り物…?』
Ht「そ、贈り物。一番世話になってる人とか、好きな人とかにね。」
世話になってる人…平たくいえば私はここの人たちみんなに世話になっている。でも…
『グルッペンさん…トントンさん…』
一番最初に私を買ってくれて、一番初めに私に優しさをくれた人。いつか、その人たちへの贈り物に、この結晶で作った花をあげたら、喜んでくれるだろうか。私はそう思い、これから少しづつ練習していくのもいいなと頭の中で考えていた。その最中、体の奥がじゅわり、と熱くなっていくような気がした。
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すみれいん(プロフ) - きゅるきゅる、ウルル…ここめちゃくちゃ好きです。 (2020年12月8日 23時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
×(プロフ) - こんなに面白い作品が読めてうれしいです!応援してますヽ(^o^)丿 (2020年11月29日 12時) (レス) id: 2c8e323fdc (このIDを非表示/違反報告)
(´ー`*)ウンウン - 好きです。(唐突)頑張ってください。 (2020年11月25日 14時) (レス) id: 79aefbbb5a (このIDを非表示/違反報告)
ラリー - 面白いんじゃあ...続きが気になって死んでまう...(訳:この作品とても好みで面白いです!更新頑張って下さい!) (2020年11月24日 22時) (レス) id: 4e3832928c (このIDを非表示/違反報告)
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