これが恋だなんて信じないⅡ (ページ5)

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千秋楽ページ5

なんとか１日で熱を下げることができた私は一度も欠演することなく初舞台を終えた。

そして私は今、千秋楽のカーテンコールに立ち会っている。
大喝采の中、私や玲夏さんを含めた数人のダンサーが一斉に舞台袖から出ていき、礼をする。頭を上げて、客席を見渡すと本当にたくさんのお客さんたちがスタンディングオベーションをしていた。この光景は、主要のキャストさんたちやスタッフさん、演出家や舞台監督の方たちのこれまで積上げてきた努力の賜物だと思うけど、そのかけがえのない舞台に、ダンサーとして少しでも花を添えられたのなら、私がここに立つ意味もあるのだろう。胸がいっぱいになるとは、このことだと思う。

「本日は、ご観劇、そしてご視聴、ありがとうございました！！」

「「「「ありがとうございました！！！」」」」

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「おつかれ～！」

「お疲れさまです」

玲夏さんや、他のダンサーの先輩たちと「おつかれ」と言い合うこの時間も、このメンバーでは今日で最後なんだなと思うと少しだけ寂しい気もした。

「あ、洸さん」

「おつかれ～」

「お疲れさまです」

相変わらず洸さんは舞台が終わったあとも爽やかな笑顔だ。体力があるからだけど、ほんと疲れてるように見えない。
洸さんは、何かを思い出したように「あっ」と声を漏らした。

「そういえば、熱大丈夫だった？」

「え、なんで知ってるんですか。宏規くんからですか？」

「うん、「Aちゃん熱出したから行けなかったら色々よろ☆」って。まあ普通に来てたから昨日はなんも言わなかったんだけどさ」

「そ、うなんですね…」

そんなとこまで手を回していたのか……あとでお礼言っとこう。

すると、後ろから小さな人が大きな声で「待って待って！なにその話聞いてない！」と言いながら私の右肩後ろから顔を覗かせた。耳が早い。玲夏さんである。

「いや別になんでもないんですよ……一昨日公演後に熱出しただけで」

「うそ、大丈夫?!言ってくれたら看病しに行ったのに…」

視界の右下にある玲夏さんの大きな瞳が大きく開いたり、心配そうに細まったりする。なんだかんだ優しい人だから、本気で心配してくれているのがわかった。

「ほんと、大丈夫ですよ？看病も……まあしてくれた人がいたので」

訝しげに玲夏さんが私を見るが、私は知らぬ顔である。

「三浦くんでしょ？さっき言ってたし」

「いや、なんのことだが…」

とぼけて見せたが、これはお話直行だ