これが恋だなんて信じないⅡ (ページ12)

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映画鑑賞後ページ12

「うぅ……感動した………良い話だったね……」

「良い話やったね〜でもさ、多分泣いとったのはAちゃんだけやったよ」

「もう…そんなに面白くないでしょ…」

「ごめんごめん」と笑う宏規くんを横目で見ながらやっと乾きはじめた目元を拭った。

たった今映画を観てきた私たちはデパ地下コスメの階へと向かいながら感想やらなんやらを言い合っていた。涙脆い私は宏規くんの前など構わず号泣してしまい、それをからかわれている最中である。

「歳のせいか涙腺弱くなってて、映画でも舞台でもすぐ泣くんだよね…」

「泣けるシーンとか得意そうやん」

「え、その考えはなかった。でも確かに、ダンスはガールズよりも感情を込めるようなのの方が得意だったなぁ」

少しでもバレエをやってたおかげもあるとは思うけど。感情を込めて踊るようなダンス、いわゆるフリースタイルとかR&Bと呼ばれるものはバレエのようなふわっとした動きが主だから。ガールズは女の子らしさとか色気を強調して胸とか首とかをよく使うダンス。私は大の苦手である。

「そういえばレミゼを観た時は映画もミュージカルも3回泣いた覚えがある…」

何気なく放った一言だったが、宏規くんは「へぇ〜レミゼ観たことあるんや～どこで泣いたん？」と意外といい反応だった。自分も出演するしね。

細かいシーンを述べると、宏規くんは「あ～確かに泣けるな～」と自分が観に行ったときのことを思い出してか丁寧に頷いて聞いてくれた。

「マリウスのカフェソングのとこは泣かんかった？」

「う～ん……泣かんかったね。まずマリウスの役が…」

そこで私は言葉を止めた。
ぶっちゃけマリウスという役がそこまで好きな方ではないのだ。レミゼ自体はミュージカルで1番大好きと言っても過言ではないし、その中の欠けてはならない役なのもわかってる。でも私としてはエポニーヌが好きだから、いやなんでエポニーヌの想いに気付かないんだよお前はあああっとなってしまう。まあマリウスがそういう性格だからエポニーヌの可哀想さが浮き立つんだけど…

不快にさせたくないな…と思いつつ宏規くんの顔を覗くと、察したのか、少し笑ってから「何でも言ってええから」と念を押された。そういえば、私がテニミュが観て、裏に行った時もそんなことを言ってくれた気がする。そう言ってくれる人には言わない方が失礼になるよね