3〜帰り道〜【番外編】 ページ40
「Aちゃん、本当に心配になるほど素直な子やね」
「えっ、どしたの。急に」
「んー？お前がおらんうちに色々話したから」
夕食後、Aちゃんと、俺と宏規で別れた後、時間に似合わず人の多すぎる駅構内を歩きながらぼやくように言ってみた。地元では、駅にこんなに人が多いことは観光地にだってない。奈良は良くも悪くも地味なのだ。
そういえばAちゃんは、「嬉しい」と言った後、「まあその人が幸せならファンとしてはそれを壊したくないし。アホなバレ方をしなければ彼女いてもいいんだけどね」と笑顔で言った。どこか悲しそうなその表情は、その向こうに宏規ただ1人を一心に見ているということを連想させて、自分のファンとしての気持ちを満たすことよりも、自分の応援してきた好きな人の成功と幸せを願うこの19歳の女の子になんとも言えないやるせない気持ちを抱かせた。
宏規は、幸せ者だと思う。
「お前、Aちゃんは大切にしろよ？」
「もう大切やし。……ほんとにどうしたん？」
「あの子、本当に宏規のこと大切なんよ。多分宏規が想像してるよりずっとお前自身のことを考えてるんや。色々話してそれがよくわかったわ」
そのとき、宏規が何か呟いた。声が小さくて聞こえない。うん？と聞き返すと、今度はかろうじて聞こえる声で言った。
「知ってる」
「はっ？」
「俺、途中から話聞いてた。二人の」
絶句した。まさかの盗み聞きとは。宏規に言えないような話もしていたので一応、どこら辺から聞いとった？と聞くと、Aちゃんが舞台俳優にされて嫌なことみたいなのを言ってたらへん、と答えて安心した。
「いや、聞くつもりはなかったんやけどぉ……なんか、気になって」
理由になってない…と思いながらも、でもまあわかるとも思った。
「お前さ、あの子のこと気になっとるやろ」
「え…なんでわかるの？」
「充分わかりやすいわ！普段、自分からご飯誘ったり、舞台誘ったりしないやん」
宏規は、人を選んで話しかける。Aちゃんはいきやすかったのだろう。
「あんな風にその、好意を向けてもらって、気にならんやつおらんでしょ…」
そう言った宏規の顔を見て俺は確信した。
宏規は顔の下半分を手で隠していた。照れている。これは本人は気付いてないかもしれないが、宏規のくせのようなものだった。しかもマスクがあるのにしている。
「ほほう、で、仲良くなりたいなーと」
「うん、まあ……」
宏規の一連の行動に俺はやっと納得した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひよこまめ(プロフ) - 晴菜さん» ありがとうございます！長らく更新せずにすみませんでした……溜めていたのでバンバン更新(多分)します！ (2019年10月25日 22時) (
レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています！無理せず頑張って下さい！ (2019年10月21日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 木綿さん» コメントありがとうございます！最近暇なので……(本当は試験が迫っている)きまぐれ更新ですが、付き合っていただけてありがたいです (2019年10月13日 5時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
木綿 - たくさん更新嬉しいです！！続きドキドキです〜〜 (2019年10月13日 1時) (レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます！最近更新が滞っているのでどんな文句が…とビクビクしてコメント見ました笑とても暖かいお言葉、ありがとうございます。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひよこまめ x他1人 | 作成日時：2019年8月27日 4時
