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宏規くんは、普段とあまり変わらない調子で、グレーのジャージを着ていた。
疲れてはいるはずなんだけど、まだ若いからか。はたまた体力があるからなのか、これと言って疲労の色が感じられるような風でもない。
男だからなのかもしれないけど、私は昔から体力が無いからすごいな
「宏規くん、お久しぶり〜。お疲れさま」
「あ、確かに久しぶりやん。なんか、ほんと、観に来てくれてありがとう。どうやった?」
「すごく楽しかったよ。氷帝戦は生で観たの初めてだったし」
正直言って、初めての1人観劇&関係者席ということで浮ついていたこともあり、語彙力が無くなっていたとは思う。緊張で言葉も選べなかった。
彼は少しなにか迷っているような表情を見せた後、目を逸らして言った。
「自分から聞くとか変なやつやし、特に感想とかもないかもやけど……俺の感想も聞いてもええ?」
一瞬私は固まった。が、私の性分的に人に何か頼まれたことはできる限りしてあげたい。
それが、宏規くんなら尚更だ。色んな意味で。
「うーん…直接観て思ったんだけど…やっぱり私は、宏規くんの跡部は好きだな。…すごくかっこよかったと思う」
そう私が言い終わると、宏規くんは少しの間の後、「ちょっときて」と早口で言って、私の私の右手首を掴んで小走りで今いた賑やかな場所とはうってかわり、賑わいの声も少ししか届かない人気の無い廊下へと私を連れて行った。
突然の行動に私は言葉を発する間もなく、おとなしく連れては行かれたものの、なんだか宏規くんの耳が赤い気がする。かっこいいとか、好きだなんて、ファンミとかで言われ慣れてるだろうに。そこまで照れるかな?そりゃあ言った方は照れるけど。
そんな雰囲気と似合わないことを考えている私を他所に、宏規くんは照れ隠しなのか本音なのか、あるいはその両方か、「めっちゃ単純やん」と呟いた。拗ねているようにも聞こえる。
「え?」
「…跡部の感想」
「しょ、しょうがないじゃん!まだ観たばっかで興奮が冷めきってないし。…それに、私は、一、二回会ったぐらいで宏規くんと会うのに緊張を感じないほど、神経図太くないよ……」
そう言って逸らしていた目を宏規くんの方に向けると同時に宏規くんが目を逸らした。私も人と目を合わせるのは苦手だが、宏規くんもだろうか?
「あーうん、せやな。…ごめん」
「あっ、いや謝らなくてもいいんだけど…」
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ひよこまめ(プロフ) - 晴菜さん» ありがとうございます!長らく更新せずにすみませんでした……溜めていたのでバンバン更新(多分)します! (2019年10月25日 22時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
晴菜 - 続き楽しみにしています!無理せず頑張って下さい! (2019年10月21日 0時) (レス) id: 3c5af7941e (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 木綿さん» コメントありがとうございます!最近暇なので……(本当は試験が迫っている)きまぐれ更新ですが、付き合っていただけてありがたいです (2019年10月13日 5時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
木綿 - たくさん更新嬉しいです!!続きドキドキです〜〜 (2019年10月13日 1時) (レス) id: a9775c7f67 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ゆさん» コメントありがとうございます!最近更新が滞っているのでどんな文句が…とビクビクしてコメント見ました笑とても暖かいお言葉、ありがとうございます。 (2019年10月6日 0時) (レス) id: dfe9b86821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひよこまめ x他1人 | 作成日時:2019年8月27日 4時