あなたへの手がかり(3) ページ26
*
「沖田くん。その人はどこへ…」
「それが…部下が追いかけやしたが見失っちまったみたいでーー」
「相変わらず役に立たないクソガキアルなぁ。お前ら税金泥棒が金貪ってるせいでこちとら生活をするのもやっとアル。わかったらさっさと情報集めてこいヨ」
「それはてめェの技量の問題だろィ。姐さん、こんなアバズレなんかと一緒に行動してると姐さんの質が落ちちまいやすぜ」
再び沖田くんと神楽ちゃんの間で火花が咲き、口論が始まる。
それを横目に、放心して私はその教本を見つめていた。
晋助が歌舞伎町に足を踏み入れているっていう小太郎の話はどうやら嘘ではないらしい。
思い詰めている私に気付いたのか。
定春が小首を傾げ、小さく鳴く。
そんな定春の顎下を優しく触り、土方さんに声をかけた。
「…土方さん。この本、頂いても良いですか?」
煙草を吹かしていた彼は、珍妙な質問に目を細めた。
おそらくーー土方さんは相手がどういう人物だったのかの検討くらいは付いているだろう。
幕府に逆らい且つこの教本に書かれてある内容を見れば、どんな立場の人物であるかは絞れるだろうから。
「こんなモン持って行ってどうするつもりだ」
「…ごめんなさい、あまり詳しくは言えません。でも、その人にとってこれは大切な物なんです」
お願いします、と頭を下げて懇願する。
土方さんとやり合っていた相手は過激派攘夷浪士の高杉晋助です、だなんて。
はっきりそんなことを口にすれば、晋助の身に危険が及ぶに違いない。
なんとかこの場を掻い潜ろうと決心を胸に、土方さんの眼力に負けじと対抗してみる。
しばらく緊迫とした空気感が続いたが、終止符を打ったのは溜息を吐いた土方さんだった。
「ーーまあいい、お前には色々と世話になってるからな」
「土方さん…」
「お前とどういった関係か知らねーが、今回だけだ。そのことを肝に銘じておけ」
行くぞ、総悟。
未だ神楽ちゃんと啀み合う沖田くんに声をかけ、先を行く土方さんの後ろ姿。
険悪な二人は地面に唾を吐きかけ、不機嫌絶頂の顔色でそれぞれ別れを告げる。
「…定春、私晋助に会えるかな?」
隣にいた愛しの定春に自信のない問いかけをしてみれば、明るい声音でワンッと返事を返してくれた。
定春の純粋な瞳に微笑みかけ、空を仰いで彼を想うのだった。
「 あなたへの手がかり 」
(あなたに逢えることを祈って)
221人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
宇治(プロフ) - 風寧さん» 風寧さん、こんにちは!宇治です。二度もコメントありがとうございます、嬉しいと言ってもらえてやる気滾ります。期待に応えられるよう頑張りますね!!これからもよろしくお願いします。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - アガシャさん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。話数もだいぶ迫ってきましたので、続編という形を取らせていただきました。頑張ります…!今後ともよろしくお願いします。 (2019年4月2日 17時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - 以前コメントさせて頂いた者です。続編のお知らせ、本当に嬉しいです!楽しみに待ってます! (2019年4月2日 1時) (レス) id: 56908df3cc (このIDを非表示/違反報告)
アガシャ - 続編ですか!嬉しいです!頑張って下さい! (2019年4月1日 14時) (レス) id: a554153f5f (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蓬さん» 初めまして、宇治です。嬉しいお言葉ありがとうございます。そう言ってもらえると、すこぶる執筆意欲が湧きます…!!今後の展開にご期待いただければ幸いです。ありがとうございました。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2019年1月20日 14時