偽りの婚姻届（３） ページ3
*
「高杉晋助。私の初恋の人よ」
ーー彼の名を久々に口にした気がする。
風の噂によると、彼は再び鬼兵隊を復活させ、総督として仲間を率いて活動しているらしい。
それ以外のことは詳しくわからない。
彼がどこにいるのか。連絡先も知らない。
「高杉さんに思いは伝えたんですか？」
「…そうね。でも叶わなかったみたい」
曖昧に答えを返すと、二人は戸惑って口を噤む。
あの日あの時、銀時の前でバカみたいに泣いたのを覚えてる。
あの人はいつも肝心なことを私に告げないで、
手の届かないどこか遠くへ行ってしまうから。
「でも、銀時はいつも私の側にいてくれたの。今だってそう」
泣きじゃくった時も、優しく抱き締めて慰めてくれた。
嗚呼ーー
この人の側にいたら、幸せだろうな。
そんなことを思うようになった。
「だから、銀時と結婚したいの」
一通り話し終えると、しばらく腕を組んで話を聞いていた銀時がハッと鼻で笑う。
「今になって“結婚してください”だ？冗談じゃねぇ」
「あら、仕方ないじゃない。あの頃は晋助が大好きだったんだから」
「お前は男を見る目がねぇんだよ」
「女って言うのはね、ちょっと悪そうな男の人に惹かれる時期があるのよ」
「ったく、都合の良い女だぜ」
ほらよ！
そう言ってペンを置いて、婚姻届を私に返す。
私の名前の隣には「坂田銀時」の文字が乱雑に書かれていた。
「結婚する覚悟でいるなら、そうすりゃいい。ーーお前が俺を好きならな」
銀時は念押しするように最後の言葉を強調する。
ーー私が銀時のことを好きかって？
勿論、好きよ。
だから結婚するんじゃない。
頭で何度も繰り返された言葉。
でも何故か、好きの二文字が口から出ることはなく。
代わりに頭を過るのはーー大好きだったあの人の後ろ姿。
そんな私の様子に銀時の溜息が溢れる。
「俺は好きでもねぇ奴と結婚なんざごめんだぜ」
「銀ちゃん…」
「どっちみちお前を養うほどの収入はねぇんだよ。他をあたってくれ」
帰るぞ、と新八君と神楽ちゃんに声をかけて、玄関へ足を運ぶ。
二人はこちらを一瞥し、銀時を追っていった。
(…結局、私は銀時の気持ちを利用してただけじゃない)
ーーなんて酷い女。
ボソリと自身を嘲笑い、いつもより少しだけ頼りなかった後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
「 偽りの婚姻届 」
(色褪せた恋心に想いを馳せて)
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宇治(プロフ) - 風寧さん» 風寧さん、こんにちは！宇治です。二度もコメントありがとうございます、嬉しいと言ってもらえてやる気滾ります。期待に応えられるよう頑張りますね！！これからもよろしくお願いします。 (2019年4月2日 18時) (
レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - アガシャさん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。話数もだいぶ迫ってきましたので、続編という形を取らせていただきました。頑張ります…！今後ともよろしくお願いします。 (2019年4月2日 17時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - 以前コメントさせて頂いた者です。続編のお知らせ、本当に嬉しいです！楽しみに待ってます！ (2019年4月2日 1時) (レス) id: 56908df3cc (このIDを非表示/違反報告)
アガシャ - 続編ですか！嬉しいです！頑張って下さい！ (2019年4月1日 14時) (レス) id: a554153f5f (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蓬さん» 初めまして、宇治です。嬉しいお言葉ありがとうございます。そう言ってもらえると、すこぶる執筆意欲が湧きます…！！今後の展開にご期待いただければ幸いです。ありがとうございました。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：宇治 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時：2019年1月20日 14時
