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泡末夢幻の囁き(2) ページ13

*


「ーーよォ、A」




聞き覚えのある私の名を呼ぶその声。

それは優しくて、懐かしくてーー


抱きとめられた逞しい腕。身に覚えのある、温もり。不意をつく煙管の匂い。


ーーーあの人の匂い。




「久しぶりだな」




揺れる髪から覗いた緑色の隻眼。

優しさに滲んだ私を見る瞳に、じんわりと涙が浮かぶ。
輪郭をなぞるように彼の頬に手を宛てがった。




「晋助っ…晋助、晋助…っ!」

「フッ、そんなに俺に会いたかったのか?」




頬に伝う大粒の涙。
確かめるように、何度も彼の名を呼んだ。

そんな私に少しだけ口角を上げた晋助のその笑みは、私が最も大好きだった彼の顔だった。




「お前は相変わらず無茶ばかりするな」




彼の伏せられた長い睫毛が私の視界を遮る。
熱を持つ私の額に、柔らかい髪の感触と温もりが伝った。


ああ、そっか。

ぶっきらぼうな声音も、
何一つ変わっていない彼の顔も、
私にだけ見せてくれるこの微笑みもーー

あの時以来、何一つ変わってない。


これはきっと夢なんだね。
そうでしょ?晋助ーー。



怠惰感で言葉もとうとう出なくなり、朦朧とする意識と虚ろな目で疑問を投げかけてみる。


彼は自身の着ていた着物の羽織で私の身体を包み込み、私の頬に唇を落とす。

何度も、何度も、優しい温もりが頬を啄む。





「晋助…好き」

「…そうか」

「ずっと会いたかった…晋助…」




ずっと胸に押し込んでいた想い。
ーー夢なら覚めないで。
そんな切なる願いを込めて、言葉に想いを乗せる。


けれど、それを遮るように彼の唇が私の声を奪った。

激しくて、噛み付くような接吻。

彼のキスは息をするのも辛くて。


徐々に意識が遠のいていく中、彼は耳元でこう囁いた。








「 泡末夢幻の囁き 」
(いつかお前を、攫いに来る)

落涙→←泡末夢幻の囁き(1)



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宇治(プロフ) - 風寧さん» 風寧さん、こんにちは!宇治です。二度もコメントありがとうございます、嬉しいと言ってもらえてやる気滾ります。期待に応えられるよう頑張りますね!!これからもよろしくお願いします。 (2019年4月2日 18時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - アガシャさん» 初めまして、宇治です。コメントありがとうございます。話数もだいぶ迫ってきましたので、続編という形を取らせていただきました。頑張ります…!今後ともよろしくお願いします。 (2019年4月2日 17時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)
風寧 - 以前コメントさせて頂いた者です。続編のお知らせ、本当に嬉しいです!楽しみに待ってます! (2019年4月2日 1時) (レス) id: 56908df3cc (このIDを非表示/違反報告)
アガシャ - 続編ですか!嬉しいです!頑張って下さい! (2019年4月1日 14時) (レス) id: a554153f5f (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - 蓬さん» 初めまして、宇治です。嬉しいお言葉ありがとうございます。そう言ってもらえると、すこぶる執筆意欲が湧きます…!!今後の展開にご期待いただければ幸いです。ありがとうございました。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: c046a70699 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/  
作成日時:2019年1月20日 14時

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