▫️貴重な一個 ページ19
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「ーーA!」
三限目の授業が終わり、ひと息ついていると教室外で私を呼ぶ声。
振り返ってみると扉の前で玲王がこちらを見ていた。
「ちょっと話がある」
……玲王が私に直接こんな風に声をかけてくるなんて珍しい。
疑問に思っているといつもなら寝ているはずの後ろの席の凪くんと目があった。
けれどそれを上回る周りの視線に耐えられず、そそくさと玲王の元へ向かった。
廊下に出ると、玲王から紙を渡される。
「今後のサッカー部の方針だけどさ、技術はともかく全体的に体力作りが必要だと思うんだ。俺と凪も含めて」
それは事細かに書き記された練習メニュー表だった。
親の期待を背負いながらも、玲王は本気でサッカーと向き合ってる。
きっと陰で想像以上の努力をしてるんだろうな……
「だから今後の練習スケジュールは………おいA」
「あ、はい!!」
「…あんまりジロジロ見るな。説明しづらい」
「ごめんなさい」
玲王も夢のためにこうして頑張ってるんだ。
私もしっかりしなくちゃ。
目標に向かう玲王の意気込みを聞き、己を奮い立たせて今後のスケジュールについて互いの意見を出し合った。
「ーーわかった!じゃあ今日からこの予定で私もサポートするね!」
「ああ、頼んだぞ」
「了解しました、ボス!」
「ふざけるな」
「ふふ!じゃあまた部活で…」
ばいばいと玲王に声をかけて身を翻した時、不意に名前を呼ばれ手を掴まれる。
「あのさ…今日部活終わったら一緒に帰らないか?」
「え…」
「お前と一緒に帰りたいんだけど」
突然の誘いに動揺が走り、わたわたと目が泳ぐ。
中学のあの一件以来、互いに幼馴染という関係性で保っていたはずなのに。
いつもと違う玲王の様子に戸惑いを隠せずにいた。
ダメか?と少ししんみりとした顔色を見せる玲王にふとあの頃の彼の表情が頭をよぎる。
「…ちょっと考えさせて」
変な雑念を振り払うように玲王から目線を逸らし、言葉曖昧にそのまま教室に逃げ込んだ。
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宇治(プロフ) - いのりさん» いのりさん、ご無沙汰しております♪お優しいお心遣い感謝です(泣)励みになります…まさかこんなにスランプに陥ると思っていませんでした…。凪くん楽しく執筆させていただきますね!ありがとうございます♪ (2023年2月17日 13時) (レス) id: 7205c6bdcb (このIDを非表示/違反報告)
いのり(プロフ) - 宇治さん!こんにちは!スランプって大変ですよね…。ゆっくり宇治さんのペースで大丈夫ですよ!応援してます♡ (2023年2月17日 7時) (レス) @page26 id: 61b0845b42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宇治 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/uji/
作成日時:2023年1月28日 17時