Anemone . 11 ページ11
スヨンちゃんを待ちながら、
さっきのユンギとのことを思い出す。
…傷について聞く人なんてなかなかいないから
ちょっとびっくりした。
……この傷が何なのかは分からない。
だけど目立たない所にあるし
特に人に見られることも無く
聞かれることも無く過ごしてきた。
…博士……。
ふと博士のことを思う。
博士の名前は ペール 。
外国人みたいな名前だし、多分外国人。
だからなんか名前で呼ぶのは嫌だった。
…博士。博士がぴったりだ。
博士は私が高校生になるまで
できるだけ私を人の目に触れさせないようにした。
…懐かしいなぁ。
私が幼い頃、博士は
" 人間らしくなれ "
と言った。
ずっと部屋にいた私に。
…いや、閉じ込められていた、の方が正しいかな。
人間としての感情が欠陥していたのだと思う。
泣くことも笑うことも驚くこともなかった。
ただ、本をひたすら読んで、
流れていく日、時間の中に
面白さを見つけることも無く
…求めることも無く過ごしていた。
博士はその時何を思ったのか言った。
−−−−−−−−
《お前は人間だ。人間らしくいろ。
悲しい時は泣き、嬉しい時は笑うんだ。
………名前があればいいな。名前をつけろ。》
『…自分で、ですか。』
《あぁ。…どんな名前でもいい。》
" 名前は人が生まれてからいちばん最初にもらうプレゼント "
本に書いてあったことを思い出す。
…別に、どうってことはない。
『…A。Aがいいです。』
なんか直感で
その名前がいいって思った。
私がAと言った瞬間、博士は
苦いような、酸っぱいような、
悲しいような、諦めたような顔をした。
そして言った。
《…A。お前はAだな。
………１ヶ月に１回、外へ連れてってやろう。》
−−−−−−−−
その言葉を聞いた時、きっと私は初めて笑ったと思う。
本で読んでいた世界が
やっとこの目で見れるのだから。
…初めて見た外はとても明るくて目が痛かった。
博士以外にもちゃんと人はいるんだと思った。
みんな顔は違うんだと思った。
みんな口角が上がっていた。これが笑顔だと知った。
大きい人も小さい人もいた。
髪が長い人も短い人もいた。
男も女も、全然どっちか分からなかった。
だけどだんだんわかっていった。
全てが初めてで
とても輝いてた。
それから、外に出る日は増えた。
そして高校に行くようになり、毎日の外出を許された。
たまらなく嬉しかった。
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りお(プロフ) - 私も、明日テストですよ！いっしょですね！ (2018年11月28日 21時) (
レス) id: 610d527ce2 (このIDを非表示/違反報告)
飴薬(プロフ) - ゆんぎらぶさん» 嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年10月27日 22時) (レス) id: 158d4b0e37 (このIDを非表示/違反報告)
ゆんぎらぶ - このピョンテな感じ大好きです！！更新ふぁいてぃんです！！ (2018年10月27日 22時) (レス) id: 8bf3196fdf (このIDを非表示/違反報告)
ＬＯＳＥＴＹ(プロフ) - ちあさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2018年10月24日 5時) (レス) id: 158d4b0e37 (このIDを非表示/違反報告)
ちあ - 本当に面白いです！楽しみにしてまーす。更新頑張ってください！！ (2018年10月24日 0時) (レス) id: 4a9056ee7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：飴薬 (Shiyaku) | 作成日時：2018年10月15日 18時
