■ ページ16
.
「なに暗い顔してんだよ」
俯いて不安そうな表情を浮かべたAの頬を三ツ谷は両手で包むようにして、顔を上げさせた。びっくりして暗い顔から一転し、目をぱちぱちと瞬きさせながら三ツ谷の顔を見つめた。
タカちゃんの手は暖かくて落ち着く。
「オレはAのこと、ちゃんと女の子として見てるよ」
「……嘘だ」
「本当だっての」
オレが嘘つくと思う？笑いながら問いかけてくる彼に、首を横にふるふると振って答える。
今何かを喋ったら泣いてしまいそうで、上手く言葉が出ない。
「オレはこの関係が崩れるのが怖くて言えなかったのに、Aは凄いよ。本当に」
頭を優しく撫でてくれる手からちゃんと愛情が伝わってくる。さっきよりも熱っぽい目で見つめられると恥ずかしいのに目を逸らせない。
「今みたいな関係もいいけど、Aのことを独り占めできるんならそういう関係も悪くないよな」
ニカッと少し照れながらも笑って言う彼につられて、私も涙を溜めた目のまま笑ってしまった。
いつものオレの名前を呼ぶときみたいに笑ってくれよ、と三ツ谷はAに笑って言う。思わず顔を綻ばせて口元を緩めるA。
「私、タカちゃんのこと好きだよ」
「今回こそはオレが先に言おうと思ってたのに」
オマエはほんとに…！と私を見つめる彼は悔しいと口では言うくせに、表情は悔しがるどころか、とても幸せそうに笑っていた。
「オレも昔からAのことが好きだよ。あわよくば、オレの恋人になって明日も明後日もこの先も、今日みたいに隣を歩いて欲しい」
「プロポーズみたいじゃん」
「気分的にはプロポーズだけど？」
「タカちゃんずるいよ……」
「Aはもっとずるいけどな」
2人で頬を染めて笑いながら、手を繋いで歩く帰り道。
小さい頃、はぐれないようにと手を繋いだときよりも彼の手は男の子っぽくなっていた。
歳を重ねるごとにこうして関係が変わっていっても、ずっと変わらないものがあったらいいな、なんてロマンチストのようなくさいことを思いながら、私たちは月明かりに照らされていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Alice(プロフ) - きなこだいふくさん» 最後までお付き合いいただきありがとうございました…！そんな風に言っていただけて嬉しい限りです…！続編を作るかもしれないので、もし作った際はぜひよろしくお願い致します♡ (2022年4月2日 17時) (
レス) id: fa28fe383f (このIDを非表示/違反報告)
きなこだいふく(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても面白い話がたくさんあり、私自身とても楽しく読み進めることができました。こんな神作をありがとうございます！そして、更新お疲れ様でした！ (2022年4月2日 11時) (レス) @page46 id: 90c5be706c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Alice | 作成日時：2021年9月19日 20時
