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パンが織りなす恋2-KH ページ3

つい大きな音に気を取られてしまって。
パン屋に続く行列のもっと後方をぼんやり眺めていると。
僕の真後ろに並んでいた人と―向かい合う格好になっていた。


女性だから、僕のが背が高い分見下ろせる位置にその人はいて。
あれ・・・?この人、この位置、この視線になんか覚えが・・・。
デジャブのような〜奇妙な感覚に僕の記憶は取り巻かれて。


そうかと思ったら―突然。
鮮烈ともいえる映像が再生されていく。


グラスの中の赤い液体―ワインが。
それが生き物のようにグラスから飛び出して。
栄光の架け橋さながらの・・・放物線を描いていく。


そして、それは。


KH「あっ。A、さん・・・?」


そう。
それはこの人と僕の―サイアクの出会いだったはずで。
それなのに、この偶然の再会をサイアクとは思えないのは―なぜだろう?


このときの僕は、さっきの騒音以上に驚いてしまっていて〜まだ気付いてなかったけど。
多分僕は、どこかでこの人にまた会いたいと思っていたんだと思う。


いつだかのイベントで―僕らはあまりにサイアクの出会い方をして。
どうにか、この人の中の僕のイメージを情けないものから挽回したくて。
だけどそれができる術は・・・まだ僕には持ち得てなかったから。


そんなだから。
僕が目の前の人を思い出すのに―時間はそう長いことかからなかった。


貴方はこのときどんな気持ちでしたか?
Aさん。
A、ヌナは―。





つけていたマスクをそっと引き下げると。
Aさんは目を大きく開いて、ハッとした顔になった。


「ああっ!あなたは・・・!」

KH「う、あの。大きな声は・・・ちょっと;」


どうやら彼女も、わりとすぐ僕を思い出してくれたみたいで。
嬉しくはあるんだけど、それは〜まぁ。
あのインパクトの強かった出会い方のせいかもしれない。


でも、今この場で僕の名を大声で呼ばれるのには抵抗があったから。
僕は口元の前で人差し指を立てた。
Aさんはその意味を心得てくれたのか、コクリと何度か頷いた。


そして。


「まさかこんなところでお会いできるなんて。びっくりです」

KH「それは僕も、です」


声のトーンを抑えながらそう言うAさんに、僕は同意した。
だってここは、パン屋に続く行列の〜最後尾周辺だ。
何でよりにもよってこんなところで・・・。


でもそれが逆に良かったのかな?
またまじまじと視線を合わせた僕たちは。
揃ってぷっと吹き出していた。

夢で踊りましょう2→←Here It Is.



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作者名:Mercury zero | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/mercuryzero/  
作成日時:2022年2月20日 14時

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