Tonight, tonight.

エスプリックな彼女-KH ページ37

あーーサイアク。
本気で消えたい！そこにいる魚のアホのせいで！！
いつもはもっとちゃんと尊敬してるﾋｮﾝだけど、今日は許さないからな！


ﾄﾞﾝﾍﾋｮﾝへの恨みごとはいくらでも口に出せそうだったけど。
ああ・・・ダメだ。
少し頭冷やせ、ﾁｮ･ｷｭﾋｮﾝ。


だってそうする前に、まず片付けなきゃいけない。
不可抗力とはいえ・・・はたからは僕がやらかしたとしか思えないだろう大失態の後始末。


Aさんは、ひらりと女性もののハンカチをポケットから出したけど。
そのハンカチのデザインとは裏腹に。
けっこう雑というか、あんまり女性らしくない手つきでパタパタと身辺を拭いていた。


せめて僕も手伝えないかと思ったけど。


KH「あー・・・；；」


これ、そうしちゃ余計にダメなパターンじゃん・・・。
拭いたところで多分落ちないし、汚れも広がるだけだろうし。
何よりこんな状況であったって―僕が簡単に触れたりしちゃいけない女の人の体、だった。


せっかく拭けそうなものがあったのに・・・。
いや待てよ、このおしぼりもﾋｮﾝたちの誰かの使用済みか？！
だあぁっ、コノヤローー！！


冷静になるどころか、すっかりペースを乱されていたところに。
すぐ目の前から、くすっという声が聞こえて。


KH「・・・！」

「・・・(笑)」


僕らの身長差のためか、Aさんが僕を見上げた目線で。
この事態を面白がってるような表情で、ジーーっとこちらを見ていた。


紛れもなく上目遣い、と呼ばれるものなのに。
彼女だけが余裕そうに見えるのが・・・やっぱり大人って感じで。


ああ・・・ホントにもう。
手詰まりだよ。


僕は苦し紛れに、一度だけふーーっと息を吐いて。
一歩だけ距離を置いたAさんに、頭を下げた。
こうしてお詫びして・・・あとはもう、弁償するくらいしか僕には打つ手がない。


「あっ、ちょっと困ります！顔上げて＞＜」

KH「同じものを用意できるかはわからないんですけど。スーツ一式、僕が・・・」

「弁償なんてとんでもない！これぐらい大したことないし〜洗えばいくらでも落ちますから！」


恐る恐る・・・頭を上げると。
胸の前でぶんぶん両手を振っている、Aさん。
だけど赤く染まったところは・・・まるで返り血を浴びたようになっている。


きっと、だけど。
これからこの人の中の「SJのｷｭﾋｮﾝ」のイメージって。
ステージで歌っていた僕よりも・・・今の情けない姿の僕、なんだろうな。

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