Tonight, tonight.

正しいだけの地図は存在しない-YS ページ24

2020年、ね。


最先端になりうる新モデルカーと。
2020年に行き着いてるであろう未来について、という。
科学的で現実的なものと・・・それに反して、あまりに抽象的で非現実的なものの両方。


そのふたつを。
果たしてそうすることが有意義なのだろうかという、小さな疑問を抱きつつ。
1時間強というプレゼンのなかで思案する。


考えようによっては、だが。
2020年の俺たちというのは―これも実は抽象的なものではなく、現実的なものなのかもしれない。
俺の隣のマンネが言うように、オリンピックの話まで具体的になっているくらいだ。


遠いようでそうでない。
長いようでそうでない。
そんな、どっちつかずな頃合いのような気もする。


そのとき俺は今より成長してるのだろうか、とか。
結婚・・・してたりするのだろうかとか。
いや、まずその前に2020年つったら―


YS「・・・俺たちいくつだ(笑)」

KH「えっ。なにか言いました？ｲｪｿﾝﾋｮﾝ」

YS「ん・・・なんでもない」


あまりその辺のことを考えたくはないなと思っちまうあたり。
2020年という時代は抽象的な未来ではなく―現実寄りなものなのだろう。


あーー・・・マジで頼むから、さ。
こんな考えに耽るヒマがあったら、早いところ仕事させてくれ(笑)
早くそこのステージで・・・歌わせてくれ。


そう思ったころ、有難くも。
早い話が・・・俺にとって、クソ面白く無かったプレゼンがひと段落したようだった。


そして。


YS「お・・・いた」


会場内をスーツ姿できびきびと動き回る彼女―A、を。
ふと見つけて、視線で追いかける。
へぇ・・・彼女。こうしてるとリポーターみたいだな。


さっきのマイクの応急処置といい、この場での立ち居振る舞いといい。
女ながらに頼もしいまでの仕事ぶりだ。
今は質疑応答コーナー、だったか。


どんな場でも出たがりなヤツってのはいるようで。
参加者たちの間ではパラパラと複数の手が挙がっている。
だが、それらの内容なんざ別にどうだっていいさ。


本来の役目を果たす前に、なんとなく疲労した気分のまま。
ふと衣装のコートに片手を突っ込むと―


YS「ん・・・？」


よれよれとした紙切れの感触。
ああ。例のあれ、か(笑)


ふと目線だけを上に持ち上げてみると。
視界の先には、相変わらず動き回っているAの姿。
それを見たら―


YS「こんなもん・・・な(笑)」


今日のステージの命綱のような紙切れを。
俺はクシャリと手の中で丸めた。

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