Tonight, tonight.

レヴェルズ-KH ページ22

EH「・・・なぁ。お前、この話の意味わかるか？」

KH「あーー・・・さぁ」


退屈さをこらえきれず、こっそり耳打ちしてきたｳﾆｮｸﾋｮﾝに。
ピッと真っ直ぐ立ったままに、適当な返事をする。
ああ。背中だけは〜猫背なのが直らないもんで、何も言わないでください。


僕もここにきてようやく知ったけど。
このイベントは、新開発の発表会みたいなものなんだな。


不毛な時間を過ごしてる・・・とまでは言わないけど。
限りなく〜専門外な話を聞いている気分の僕たち。


まぁ、それでも。
招待客を飽きさせないようにか、だいぶ噛み砕いた説明で。
わかりやすさに心をくだいてるようにも思えるプレゼンなんだけど。


あの演者・・・この企業のCEOだな。
確かツイッターにも、公式アカウントがあって。
自己啓発系のツイートが、ビジネスマンや起業家によく支持されてるくらいのね。


僕らも「特別ゲスト」、なんて待遇ですけど。
事務所を経由してこのオファーを請け負ったのその裏には。
僕らにとっても、大きな意味がある―。


今夜のイベントに出演することで僕たちは。
この企業の製品CMなんかの仕事も、今後割り振ってもらえるってわけだ。
さすがに2020年の新モデルとやらの発売までは待ってられないけどね(笑)


だから、このイベント自体の出演料はいかほどか、とか。
歌うだけならまだしも。
なんでこんな分野違いのプレゼンにまで付き合わなくちゃいけないのか、とか。
そんなことは間違っても口にしちゃいけないってことですね。


それはそうと、これ。
あとどれくらいやるんだろう・・・。
辛抱強い僕ですら、いい加減うんざりしてきたころ。


「それでは〜概要はこのあたりにしまして、そろそろ質疑応答に移りましょうか＾＾」

「質問がある方はどうぞ挙手を。スタッフがマイクを持ってそちらに参ります」


演者と司会者の進行に、わずかに体の力が抜ける。
僕はこのタイミングでテーブルに置いていた、飲みかけの水のグラスを手に取った。


プレゼンの間、ほとんど動くことなく。
一応は寝ずにきちんと目を開けていたらしき―ｲｪｿﾝﾋｮﾝも。
こきこきと首を左右に傾けて。


だけど。


YS「お・・・いた」


この会場の―僕らのテーブル側の果てといってもいい方角。
その方向を見やりながら、ｲｪｿﾝﾋｮﾝがどこか愉快そうにつぶやいて。


ﾋｮﾝが目で追っていたのは、そこのテーブルの挙手をしていた人じゃなく。
実は―その人の元に駆け寄って行った人。

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