Tonight, tonight.

ひとつになれない不思議な惑星-YS ページ18

LT「こんなもんかな？オーケー！いいぞみんな＾＾」


ほんのわずかな時間の―リハと呼ぶには心許ないが。
まさしく音合わせ程度のそれを。
リーダーの満足いくような声とともにひと段落させる。


これでも今日歌う予定のナンバーを1回ずつ全員で合わせたんだ。
時間に余裕があまり無いって中で、それだけやれれば十分さ。


人数がやたらと多いヤローたちでぞろぞろとステージを下りる。


耳から外した「Y」の字が刻まれているイヤモニを手の中にしまうと。
やっぱりこんな大げさなもんが必要なのかとも思ってしまったが。
まぁ・・・無いよりはあったほうが、な。


そんなことを思っていると。


KH「ﾋｮﾝ。やけに気合い入ってましたね。さっきの音合わせ」


俺のすぐ後ろ。
一段ほど俺より高い位置にいた弟の声が。
頭上から降ってくるように届いたのだった。


YS「なにかおかしかったか？」

KH「別に。ただどういう風の吹き回しかと」

YS「んーー。なんだろうな＾＾」


俺は曖昧に言葉を濁して、弟が感じたらしき疑問をすり抜けた。


気合い・・・入ってるように見えたのか、さっきの俺(笑)
気合いとか張り切ってるとか、そんなじゃないさ。
このイベント自体よくわかってないくらいだ。


ただ・・・なんとなく、な。
彼女を驚かせてみたくなった。


SJのメンバーの一人として、ここまで培ったキャリア。
10年以上の前の―何も持たなかった俺を、一応でも知る彼女だからこそ。
今の俺の歌を聞いたらどんな反応をするだろう、と―


ハハ・・・さっきのAの顔、さ。
驚いてくれたのは間違いないんだろうが、やけにぎょっとしたもので(笑)
俺が彼女の方を見たの―気付いたかな。


声の主のブラックマンネは振り返らず、Aのそんな表情を思い出しては。
俺はちょっとしたお楽しみを手に入れたガキみたいに。
「クッ」と小さく生まれた笑いを、後ろのヤツに悟られないようにこらえたのだった。


だけど。


KH「なに笑ってんだよ。マイワールド偏屈ヤロー」


しっかりバレてた、な(笑)
しかしマイワールドには浸っていたかもしれないが。
偏屈なつもりは・・・ない(笑)


それに関して、反論してやろうかと思ったが。
俺がブラックマンネを振り返るより早く―


KH「水もらいに行きましょう。でないと本番でさっきの調子出ないだろ」


そう言って弟は、ポンと俺の手に。
ヤツのものである―青い海を模したイヤモニを押し付けて。


スタスタと俺を追い越して行った。

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