Tonight, tonight.

ビッグスリープ貪った-YS ページ12

Aが示した方向に足を向けたら―簡単に辿り着けた目的地。
なんでこんな単純な場所で迷っていたのか。
我ながら謎だな(笑)


ステージ袖というには大げさだが。
会場のステージすぐ脇の入り口にぶつかる。


そのステージの上も下も。
わらわらとスタッフや従業員らしきのが、準備や作業に追われていて。
規模は違えど―この光景は、SUPER SHOWの公演直前ともよく似ている。


しかし、まぁ・・・な。
別にそれらの公演と比べるわけでも。今回を侮っているわけでもないんだが。
緊張感は、それよりずっと軽いというかラクなもんで。


YS「ん〜〜んん〜〜♪」


俺は鼻歌まじりに、ステージに伸びた小階段を昇った。


そこには俺を置き去りにしていった連中(笑)
俺の兄弟でもあり、仕事仲間でもあるヤツらがズラリと立ち並んでいて。
俺の姿を見つけるやいなや、一斉に似たような視線を寄越した。


ﾄｩｷﾞﾋｮﾝはリーダーらしく、毎度口やかましいことを言ってくれるが。
こういった状況は俺も兄弟たちも・・・すっかり慣れたもんで。
ﾋｮﾝの小言も、マイナスイオンつきの視線たちもすり抜け―
俺はその輪の中に入ったのだった。


しかし・・・本番前だってのに。
こうしてステージに立って、ライトを浴びると暑くて仕方ないな。
ｼﾝﾄﾞﾝなんかは、すでに額の上で汗の粒が光っている。


なにせ俺たちは、屋内にいるのにかかわらずコートを着用していて。
それぞれの個性に合わせたデザインに、形や丈の長さが違ったりするが。
俺のなんて首元にわさわさしたものがついてるくらいだ。


それはそうと。


KH「ｲｪｿﾝﾋｮﾝのマイク。調子が悪いみたいです」

YS「なんとなくそんな気がしてたんだ・・・」


これもまた、俺にとってはありふれた状況。
だが・・・あまりにお決まりすぎたトラブルに思わず脱力めいた笑みが浮かぶ。


これでも俺・・・メインボーカルなんだけど、な(笑)
ただの偶然だと信じたいところだが。
まるで歌うことを認められてないようで、どうにも複雑な気分になる。


あるいは考えようによっては―
これは「ｲｪｿﾝ」という名を与えられた俺への試練か何かなのかもしれない。


ああ・・・そうだ。
偶然といえば、もうひとつ。


「すみません！お待たせしました＞＜」


バタバタと小階段を駆け上がってきた彼女の姿を再び。
俺の目が捉えて。


同じ偶然でも、さ。
俺にとってはこの珍妙な場所での再会劇のが―
よっぽど驚きと新鮮さに満ちていた。

踊ってみよう、その上で→←この街はいつもこんな夢を見てる-KH

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す