QK高校生徒会執行部 2

Episode67 ページ32

「あーおいしかった！」


「そろそろやりますー？」


机の端には、食べ終わったアイスのカップが全員分積み重なっている。ぐだっと背もたれ付きの椅子に寄りかかってくつろいでいる須貝は、呑気そうにそう言いながら伸びをした。

快適に冷房の効いた部屋に、伊沢のくれたちょっとお高めの美味しいアイス。極めつけは、人をダメにするソファときた。こんな空間で、グダるなという方が無理な話なのだ。


「お前たち他人の家来てくつろぎすぎだろ！何のために今日こんな早くから家にあげたと思ってるんだよ！」


「伊沢の家でくつろぐ分の時間だけ早く来たに決まってるでしょ」


「もう二度と家に招かねぇ」


「ごめんって、勉強しよ勉強」


スマホをいじりながら冗談をかます福良だったが、伊沢があからさまに呆れたような顔をしたのを見てよいこらせと腰をあげる。

川上曰くこの流れはもはや毎回お馴染みの光景なのだそうだが、いかんせん普段積極的にふざけて皆に咎められている伊沢が(※番外編参照)いつもとは逆の立ち位置にいることが一年二人からすると違和感でしか無かった。

そしてその事を河村にボソッと伝えると、仮にも生徒会長だから、やることは一番きちんとやる人だよと笑って告げられる。

ふと、入学式で感じた伊沢の威厳のようなものは、社長である親譲りのものなのではないか、と山本は思った。


「今回はなんか急かすじゃん、どうしたの伊沢」


「いや、どうしたのって聞く方がどうかしてんだよ…ちょっと物理困ってて、須貝さんがいるうちに片付けときちゃいたいの」


「おっ！よしきたこのナイスガイに任せときなさい」


引き続き須貝も伊沢の発言でスイッチが入ったのか、カバンから勉強道具を取り出して机に向かい始めた。それを合図に、くつろいでいたみんなも各々勉強準備を始める。


「まぁ、今日の会は一年生二人に勉強を教えようの会だからね」


「でもなんか、山本にはもはや負けてる気もする」


「いやいや、やってない範囲は僕も出来ないですって」


そう言いながら山本が取りだしたのは、物理基礎の問題集。一年生は理系の基礎科目は全てやるため文系の生徒にとっては辛いものの、世界史Aと日本史Aも通るため理系の生徒にとっても辛い。

二人ともそれぞれ自分の得意な教科から勉強しようという魂胆で、こうちゃんも世界史のノートを取りだした。


「よし、じゃあここから頑張るか」


こうしてようやく特別勉強会は遅めのスタートをきったのだった。

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