Episode52 ページ4
首にかかっていた圧迫感が消え、ひゅ、と勢いよく空気が肺に入ってくる。
その急な切り替わりに苦しくなって、思わず激しくむせてしまう。
目の前で何が起こっているかその目で確認しなければならないのに、咳き込んでしまったせいで目に涙が浮かんできた。
「君か、一連の窃盗の犯人は。」
「…っ」
誰かに助けられた。
未だに涙ぐむ目で声のするほうを見ると、そこに居たのは、この前職員室の前で俺に話しかけてきた人だった。
「山本!!」
「…っ!福良さん!」
犯人を追っかけて走ってきた方を見ると、そこには福良さんと、福良さんを呼んできてくれたのであろう神崎さんの2人がこちらに向かって走ってきてくれていた。
「山本、大丈夫…!?首真っ赤…」
「山本くん、」
「…僕は、大丈夫です。あちらの方が助けてくれて、」
「って、河村じゃん!」
そう名前を呼ばれたその人は犯人の男をキリキリと縛り上げながら、福良じゃん、ちょうどいい所に。と言って、そのまま俺の方に目を向けた。
「河村、さん」
「うん、前に話したよね。俺と同じ生徒会で、副会長」
この人が、そうだったんだ。
呆然としている間にも、福良、とりあえず誰か残ってる先生と警察呼んで、と、2人によってテキパキと作業が進んでいく。
どうしていいか分からず何となく手を首に持っていくと、そこはまだ少し熱を帯びていて、意識するとまだズキズキと痛みが走っていた。
「山本くん、」
「神崎さん」
俺の横に座り込み、大丈夫?と問いかける彼女は、まだ少し息を切らしていた。
「ごめんね、私走るの遅くって…」
俺が首に手を当てているのを見て、申し訳なさそうに眉を下げる彼女に、ゆっくりと首を振って応える。
「そんな、全然。助かったよ」
「…でも、やっぱり山本くんが危ない目にあっちゃった…」
彼女の声が震えていることに気づいてその顔を覗き込むと、その瞳には涙が今にも溢れんばかりに溜まっていて。
思わずギョッとして何か言おうと口を開くものの、線が切れたように彼女は泣き出してしまった。
「か、神崎さん、ちょっと、大丈夫だから…!」
周りにヘルプを求めて見渡すも、誰もかれも忙しそうに動いていてこちらに気づく様子など全く見受けられない。
どうしよう、え?俺が泣かしたの?
彼女の横であたふたとしてる俺を、少し離れたところから福良さんが微笑ましく見ていたなんて、この時の俺は気づいてもいなかった。
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Syuri(プロフ) - なつめさん» コメントにありがとうございます!やっぱり可能性コンビは可愛いですよね…私もいつもなつめさんの小説読んでによによしてます笑 これからもぜひ呼んでください! (2020年6月4日 19時) (レス) id: 090c01e7bb (このIDを非表示/違反報告)
なつめ(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませて頂いています。山本くんお誕生日…いやあ、最高でした!ラストそうきたかあー。先輩方のドタバタと、かわいい後輩くん達のやり取りが面白くって、いっぱい笑わせて頂きました。これからも楽しみにしてます! (2020年6月4日 11時) (レス) id: 6fb7510317 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - 怜さん» 嬉しい!ありがとうございます!本気で生徒会室に冷蔵庫あるんですか!!笑 個人的に無理矢理な設定だったかな〜なんて思ったりもしていたので、ちょっと安心です笑 しかも公立高校なのにすごいですね!!コメントありがとうございました…!! (2020年6月2日 7時) (レス) id: 090c01e7bb (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!山本さんお誕生日回…!たくさん更新されてて1人テンション上がってしまいました笑 以外余談。私ごく普通の公立高校生ですが何故か生徒会室に冷蔵庫あります…謎の親近感を覚えて楽しかったです!笑 (2020年6月2日 3時) (レス) id: 291ffdfed4 (このIDを非表示/違反報告)
Syuri(プロフ) - (名前)豆腐さん» 本当ですかありがとうございます!!最近更新時刻がバラバラになりがちになってしまっているんですけど、そう言って頂けるともっと更新頑張ろうって思えます!これからもよろしくお願いします…!! (2020年5月19日 16時) (レス) id: 090c01e7bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Syuri | 作成日時:2020年5月14日 0時