QK高校生徒会執行部 2

Episode60.5 ページ18

「あ、伊沢に頼まれてきました須貝です」


「はい、こちら頼まれていたケーキになります。よろしくお伝えくださいませ」


「どうも」


校門で、須貝は伊沢の家の者と思われる人からケーキが入った箱が入った紙袋を受け取る。

その時ちら、と須貝の目に入ったのは、その人が乗ってきたのであろう高そうな黒い車。

さすが金持ちはちげえな。この紙袋のロゴも見たことがある、かの有名店のマークだ。
ボタンひとつでこんなものオーダーしちまうなんて、と感心にも似た気持ちを抱きながら、生徒会室に戻るため踵を返した。

廊下を歩きながら、今頃教室で駄弁っているであろう山本の姿を想像する。

須貝としても、山本は気に入っている後輩の一人だった。自分はクイ研にこそ入っていないものの、山本は理系に興味があるらしく須貝とはなかなか話が合うのだ。

もともとサプライズの類が好きなこともあり、彼自身この計画には伊沢に次いで乗り気なメンバーの一人だ。


「あれ、須貝さん」


「ん？」


声越した方を振り返れば、先程まで思い浮かべていたその顔が見える。偶然ですね〜なんて言って手を振る山本に、おーと言って須貝は手を振り返した。

パタパタと駆け足で須貝のいる方へやってくる。


「こんなとこで会うなんて！何してるんですか？」


「んー？えっとケーキ…」


そこまで言って、は、と我に返る。
ちょっと待て。これは今遭遇してはならない人物ランキング、一位の山本ではないか。


「ケーキ…？」


「いやえっと、景気！景気がいいよな、最近！！」


ははは、と笑う須貝の頭の中は、はてなマークで埋め尽くされていた。

なんで！？こうちゃんが教室で引き留めてるんじゃなかった！？


「山本は、どっか行く途中？」


「はい、生徒会室に。もし須貝さんもでしたら、一緒にどうですか」


まずいー！！これはまずい！！
今俺が持ってるこれがケーキだと勘づかれることもまずいが、生徒会室にコイツを連れて行ってしまうことが一番まずい。


あー、うーん、なんて適当な返事をしながら、急いでポケットからスマホを取り出してメッセージを送る。


須貝『ピンチ！至急救援求む！二階のラウンジ！』


するとタイミングよく直ぐに既読がつき、返信が返ってきた。


伊沢『どうしたんですか？』


須貝『山本に遭遇したんだよ！生徒会室行くとかぬかしてる！』


不思議そうな顔をする山本にはは、と笑いかけ、急いでまたスマホをポケットにしまった。

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