銀魂 【不死蝶の舞姫】3

第百二十四訓 ページ26

Aside







(ここは…どこ？)




霧がかった世界。私、ここを知ってる。そうだ、あの"夢"だ。銀時と出会った事で見なくなった懐かしい夢





(いつぶり、かな)




目の前に立つ四つの背中。銀髪から伸びる鉢巻が気持ち良さそうに風で揺れている。ゆっくりと振り返った赤い目が細まり、困り顔を浮かべ笑った。





───「A？」





私に向けられた優しい眼差し。でも、知っているから…その眼差しは"私"(あの子)に向けているんでしょ？






──「おーい、置いてくぞー」





何度も、何度も、側に駆け寄りたかった。横を通り過ぎる"私"(あの子)の背中を何度羨ましいと思ったか。幸せそうに笑ってみんなの隣に立つその背中を見るたびに悔しくて、苦しくて、悲しくて。
君達は、私の事を見てくれない。私を通して"私"(あの子)を見てるから。






(あぁこれ…やだ)





今まで見ていた夢の方が何倍も良かったと思った。
だって今の私は貴方達が"私"(あの子)を見てるって知ってるから。これから私の横を通り過ぎるであろう"私"(あの子)が──こんなにも羨ましい。





『どうして…羨ましいの？』





自分の声が不自然に反響した。紫がかった黒髪とその髪に映える真っ白な鉢巻。
私を真っ直ぐと射抜く本紫の瞳。





「な…んで…」





目の前の彼女の姿に、言葉を失った。




『だって"私"(あの子)は"私"(あなた)でしょ？』



愛おしそうに目を細め、優しい笑みを浮かべる私が、立っていた。

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