両手に花？いえ、両手に薬草です！ (ページ9)

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『また山田先生の洗濯物を渡しにきたのですか？』

利「まあな……

　はい」

『どうも』

利「…また試薬したのか？」

私が入門表に目を通していると頭上から不機嫌そうな声が降ってくる。

顔を上げると声色通り眉を寄せたエリート忍者が私の右腕をみていた。

『…えぇ、先日新しく切り傷に効くと言われている薬草を手に入れたので』

気付かなかったうちに少しズレていた手甲からちらりと見える包帯を隠すために手首に触れる。

利「傷が悪化したらどうする」

毎回そう。

どこかしらに新しく傷ができる度にこうして言ってくる。

『元々傷は付いているのでお気になさらず。

　生活に支障は出ていませんし皆さんに迷惑はかけていないかと』

利「そういうことじゃ」

？「あれぇ？

　お二人ともどうしたんですか？」

「『…っ小松田君！』」

私と入れ替わりの時間になっていたらしく小松田君は入門表と筆を持っていた。

小「なんだか空気がピリピリしてましたけど…」

妙に勘のいい小松田君にヒヤッとしながらも私は咄嗟に笑みを貼る。

『別にそんな事無いと思うんだけど…

　もしかしたら…山田先生の愚痴を“利吉さん”が仰っていたからかもしれないわ』

利「っ…私は一言も」

『あっ！！

　いけない！吉野先生から書類整理をするように言われていたのに時間に間に合わないわ！

　ごめんなさい小松田君！この紙よろしくね！』

私は利吉さんが話す機会を与えないように早口で言葉を紡ぎ山田利吉とサインが書かれた紙を渡してそそくさと立ち去った。

利「あっ！！おいっ____！！」

本当っ余計なお節介よ……！

私は唇を噛み入門表を挟んだボードを強く握った。