【d!】魔王から逃げたい傭兵の受難

８ ページ8

.


ふと、身体が浮上するような錯覚を覚えた。
目を開けて最初に、白いなと、ただそれだけ思った。頭がぼうっとして上手く頭が回らない。

なんだっけ、何してたんだっけ？私はどうなってんだ？寝てるのか？


身体中が痛い。確認しようと手を動かそうとしても動かない。足も動かない。まるで何かに縫い止められているような。



「起きたか？」


「？」


白い空間に鮮やかな金と黒が足された。この人見たことあるな、確か、


「･･･ま、ぉ、･･･ぐるっ、ぺ、」

「ほぉ、その反応は中々可愛らしいな」


ひたりと頬を撫でられた確かな感触に意識が再浮上を始める。モヤがかかっていた記憶が次々にフラッシュバックを始め、波のように押し寄せる情報量の処理に全神経が持っていかれた。


「あ、」


「どうした？コネシマに叩きつけられて頭がおかしくなったか？」


そうだ。私はアイツに気絶させられて、戦って、逃げて、魔方陣に、魔王が、


段々と遡っていく記憶が鮮明に脳内へ映されていく。


ジッとこちらを見る蒼灰の眼が三日月に歪んだ。


「ぎゃあああ、ぁっ、痛っ、うっ…！」


叫んだ拍子に首筋から腰、つま先にかけて激痛が走る。痛みと息のし辛さとが合間り生理的な涙が浮かんだ。


「元気なのはいいことだが、全身打撲と裂傷で叫ぶのは懸命とは言えんな」

「おま、ぇ･･･らが･･･！」

「あぁむしろ手足が揃ったまま連れてこられるとは思わなかった。なにせあの2人だからな、どこかもげたか、最悪身体だけだと思っていたぞ」


それならそれで拘束する手間も省けたがな、と言われやはり手足が動かないことに違和感を覚える。布団の下に集中すれば、手首と足首になにか重たいものが付けられていることが分かった。


「手錠･･･？」

「鎖付きのな。万が一もあるので拘束させてもらったぞ。お前とゆっくり"お話し"したいことがあるんだ」

「断る」

「そうか。ゆっくりしていってね」


聞けよ。っていうかまったく可愛くないしその笑みでより狂人度が跳ね上がったからな。


私にはなぜ魔王が、私のようなただの傭兵に固執するのか検討がつかない。
魔力持ちだから？何かしらの方法でパーティに案内させて、幹部を派遣してまで捕縛して、いったい何が目的なんだ？

黙る私を余所にグルッペンは変わらず笑みを浮かべている。見透かすような嫌な笑い方しやがって、



こうなればもう、力技で突破はできないだろう。


「･･･わかった。要件を話せ」


.

９→←７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す