【d!】魔王から逃げたい傭兵の受難

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この世界には絶対無敵超最強の魔王が存在する。


その強さは何千年も生きた竜を凌駕し、彼の腹心である幹部たちもそれぞれ魔王に勝らずとも劣らない力を持つと言われている。
そんな超次元的な存在がある日突然降ってわいて、世界に宣戦布告したのが100年前。
魔王に恐怖した各国はすぐに兵を向かわせたがやはり敵わず全て返り討ちにあったという。

次第に長引く戦闘で国力の低下を恐れた王たちは、できるだけ省エネに済ませるため懸賞金を出し、有志を集わせ、魔王を倒した者には地位と名誉と富を与えると約束した。

訓練された国有軍でも敵わないのに野良の傭兵が勝てるかと疑問に思うかもしれないが、まれに結構いいところまで来てしまう人たちがいるのだからよくファンタジーに出てくる勇者の存在もあながち間違いではないと思う。


現に私も、
こうしてボス部屋一歩手前に佇んでいるのだから。




おどろおどろしい装飾が施された重厚な扉の前、効果音があればズォオオンとかゴォオオンといった感じがよく似合う大扉を見上げ、私はため息をついた。

大変だった。
ここに来るまでの道のりは長く険しかった。
私はもともとそこらを旅して回る傭兵で、魔王討伐のためではなく、道すがらどこぞのパーティーがスライムに襲われてるところを助けたがために、そのパーティーに半ば強引に加入させられ今に至る。

もちろんスライムに苦戦している時点で魔王はムリだやめておけと言ったがこの人ら聞きやしない。あげく愛だ夢だ希望だと言い始める始末で、頷かないと開放してもらえなさそうで仕方なかったのだ。


人を守るのも傭兵の仕事、魔王を倒せればお金たくさん手に入ると自分に言い聞かせてきたが正直ここまで来ると不安は募る一方だ。

だって千年竜を凌駕する魔王が、ただ剣と魔法を人より上手く扱えるだけの人間に倒せるのか？という疑問はもちろんのこと、敵はこちらを視認してもほぼ素通り、道中で遭遇した幹部たちもなぜか不自然に退却していったと思えば、片や別のパーティーはその幹部たちにボロ負けして退散したと聞いている。
この優遇とも呼べる違いがずっと胸にわだかまっているのだ。


リーダーがみんなにアイコンタクトを送る。
これで鍵がかかっていたら多少は緊張もほぐれるのになぁ、と珍しく強張った顔のリーダーが地獄の門もかくやと思える大扉にそっと手を掛けるのを眺めていたら、触れるか触れないかのところで勝手にバァンッ！と勢いよく扉が開いて肩が跳ねた。

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