砕けたのは ページ4
くるり、と鏡の前で一回転する。スカートがふわりと舞った。
『うん、可愛い』
満足げに微笑み、椅子に座ってメイクをする。
淡いピンクのリップにも、マスカラを塗ることにも、もう何の抵抗も感じなくなった。似合うんだから、仕方ない。
『あー……グロスもう切れそう』
手馴れたもので、ものの数分でメイクを終えると今度は髪をアレンジする。
学校では二つに結んでいるだけだが、プライベートでは凝った髪型も楽しんでいる。
と言っても、最近ようやく編み込みが出来るようになった程度だが。
そこら辺の女子よりずっと可愛い。
(僕って罪な男……いや、女か？)
完成、とAは鏡でもう一度自分をチェック。
女にしか見えない顔。にこ、と笑顔を作り、はぁ、とため息を零した。
("可愛い"な、本当)
自惚れじゃなく、自虐で、皮肉だ。
どこの世に女顔の王子様がいるだろう。そう思ってはまたため息を吐いた。
ガチャ、と玄関の開く音がした。
反射的に顔を上げ、部屋を出て玄関へ向かう。
『おかえりなさい、お義父さん』
「ああ、ただいまA。それと、合格おめでとう」
ケーキ買ってきたぞ、と袋を掲げる義父。
こうして見れば、普通に"良いお父さん"なのに。
なんて思いながら、Aは「ありがとうございます」と笑顔を貼り付け袋を受け取った。
『……あれ、二つですか？』
「お前と母さんの分だよ。俺は＿＿＿＿」
(……あ、そういう)
頬に手を添えられ、察した。
「いいね？」
断ったら、殴るくせに。
『…はい』
"可愛い"から、女物を着るべきだ。
そして自分に奉仕しろ、と。
それを強いられ、何年経ったんだろうか。
お前は女の子なんだよ、と無理矢理抱かれながら言われ続け、Aの心はとうに砕け散っていた。
(……髪、可愛くできたんだけどな)
ぼんやりそう思いながら、手を引かれ、義父の部屋に入っていった。
途中、母親と目が合った。
嫌そうな、気持ち悪いものでも見ているかのような顔で自分を見る母親。
もう、何も感じなくなっていた。
今日のキャンディー
りんご味
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我は竹の子(プロフ) - 最高っす！主人公が幸せになってくれればいいんすけどねぇ、、、、 (2019年10月5日 12時) (
レス) id: 10e4225bcf (このIDを非表示/違反報告)
｡ゆりゅぃ｡(プロフ) - 初コメ失礼します。面白いです！続き待ってます^^* (2019年7月21日 18時) (レス) id: eee496b48d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Re: x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2019年7月9日 23時
