file1. 前世でぽっくりいっちゃった!?ver.2 ページ3
「うー、」
(にしても豪邸だよなあ……)
周りを見渡していると、玄関のほうから走っているかのような足音が聞こえたあと、Aがいる室内のドアが開いた。
――ねえ、さっきから言ってるでしょ??……有希子……あの子を養子にしてほしいの
――……ええ聞いてるわ。現状はわかったけど……
二人の女性が中に入ってきた。一人はつやつやとは言い難い黒髪。衣服の数か所に血がにじんでいて、なによりもその体はものすごく痩せ細い。
もう一人は有希子という女性で栗色で、つやつやな髪をしている。
「この子よ」言いながらベビーベットで横になっている御子を抱えて、有希子を見ているひとりの女性。
「……あらまあ、かわいいわね、この子」
その黒髪の女性の美しい見た目に思わず朱莉は見惚れてしまうも、話を推測すれば、どうやらこの女性が自分の生みの親のようだ。有希子が朱莉の頬をぷにぷにと触っている。
(どうやら私は、工藤家の親戚、ではなく養子になるみたいです。今の時間は原作の17年前――いや、20年前だろうか。新一君と蘭ちゃんが生まれる前だよね、たぶん)
「うん、そうなんだよ」
事情があって、と告げる母らしき人。その女性の体には痣や傷がついていて痛々しいことがベビーベットからでも見て取れた。この人がAの母なのかと、理解するまでには時間はかからなかった。
「事情はわかったわ。この子は私たちが育てるから……」
この家に入る前からずっとこの話を有希子さんにしていたのだ、黒髪の女性のほうを朱莉がそっと見れば安堵のような表情を浮かべていた。
「……ごめん、ありがとう」
「よろしくね、―――ちゃん」
有希子と名乗る人物は、朱莉――Aに向かって軽やかな声色で言えば、黒髪の女性は玄関へと去っていった。私は有希子に「うー」と返し、にこりと笑うと、落ちるかのように眠りについた。
「あらあら……。寝ちゃったの……」
すやすやと吐息を経てながら眠る私を、有希子はゆっくりと柔らかいベビーベットへとおろし、トントンとお腹を軽く叩けばAは「うー」と寝言を言う。キラキラとした笑みをしながら有希子は、夫の優作を呼びに外へと出掛けたのだった。
「……そこのあなた。私の過去に興味あるでしょ」
『え、ない??』
「……残念ね。たとえ教えたくなくても貴方は確実に私の過去を知ることになるんだから。では、いってらっしゃい」
file1. 前世でぽっくりいっちゃった!?ver.3→←file1. 前世でぽっくりいっちゃった!?ver.2
111人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みーー | 作成日時:2022年5月16日 18時