守りたい【煉獄杏寿郎】

三十頁 ページ32

「邪魔をするな！！！！」

邪魔をするな？…それはこっちの台詞だと言いたいが、生憎声を出している暇がない。


残った右手で折れた刀を使って、鬼の身体を傷つけようと何度も試みるが、避けられ、傷が浅くしかつかない。



煉獄さんを狙いたいのでしょう？


煉獄さんと戦いたいというのが痛いほど伝わってくる。

　

こんなに必死に頸を斬られないように守る鬼を見る。
ただ、純粋に戦いたいという気持ちしか残っていないような、この鬼を。


そしてふと、死を間近にして、
あんなに憎かった鬼に違う感情が芽生えた。


この鬼はなんて可哀想なのだろうか。

戦う事でしか存在意義を見出す事しか出来ない、

人を殺す事でしか楽しさを思い出せない、



可哀想な"人"……。



「"猗窩座さん"……どうか、私と…共に死んで…くださいませ…」


私がそう言いながら微笑むと、彼は酷く驚いたように目を大きく見開いた。


その瞬間に、刀を握る手に力を入れる。



……楽にしてあげたい。なんて、自分勝手な考え。



「(殺気を感じなかった！！！なんだ！この女！
…それにこの感じ誰かに似……いや、そんな事はどうでもいい)

……ほざくな。それに、お前は守ろうと動いたようだが、何もお前は守れていないぞ！！！」




「っ！！」


……駄目だったのね。
私の力ではやはり貴方をお守り出来なかった。




背中が暖かいのは、ゆっくりと流れ落ちる血は、

…私のものだけではないのですね。




気が緩んだ瞬間を、猗窩座が逃すはずもなく、私の刀を口に加えてバキッと割る。



でも………



「お前は無駄死にする！！」


「無駄などではない…彼女は責務を全うしようとしているのだ」


「……！何を言っているのだ杏寿郎」




でも……例え貴方を守れなかったとしても…私は





「彼女は…彼女の心はまだ燃えているぞ！！！そうだろ！！！A！！！！」



「愛の呼吸…肆ノ型 愛執の念」





…私は、貴方が守ろうとしている者を、
ここにいる者たちを、



________________守りたい。









________________________

愛の呼吸 肆ノ型 愛執の念
(刃が触れた部分を離れなくする技、抵抗すればするほど深く入り込む)

三十一頁→←二十九頁

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す