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神楽「ですが、安心してください…。昨日神隠しに遭った村の住人と、あなたの仲間はまだ無事です。私の魂を解放していただければ、まだ間に合います」
瑞生「解放…?」
神楽「はい…。あなたのその力があれば…。それは可能なはずです…」
神楽は瑞生の手にもつ水晶玉を見つめていた。
瑞生「もしかして…ずっと僕を呼んでいたのは…」
神楽「はい…。私です。きっと、あなたならば、私の魂を救ってくださると思っていました」
瑞生「良いのかい…?天国にも、地獄にも行けない…ただ無限に続く夕暮れの中に閉じ込められてしまうんだよ?」
神楽「ええ。良いのです。このまま何の罪もない人々を犠牲にしてしまうよりは、私の魂は救われます。それに、私は好きですよ。夕暮れ…」
瑞生「…そっか。気が、合うね…。僕も好きなんだ…。夕暮れ…」
神楽「さあ、その水晶玉の光で私を操る力が弱まっている今のうちに…」
瑞生「…わかった」
そう言うと、瑞生は黄昏に輝く水晶玉を、神楽の方へ掲げた。
そして、神楽は嬉しそうに微笑むと、夕顔の香りを残し、その魂は水晶玉の中に封印されていった。
「ありがとう。あなたの仲間が外で待っています…。ですが、気を付けて…。強大な力が…目覚めようとしています…」
瑞生の頭の中で、神楽の最期の言葉が響き渡った。
瑞生「…強大な…力…」
―
古墳を出ると、すでに太陽が昇り始めており、小島の上の社の下に気を失って倒れこんでいる村の住人と、六人の勇者の姿があった。
皆怪我もなく、無事なようだ。
瑞生「皆…良かった…」
瑞生が六人に駆け寄ると、ある事に気が付いた。
六人の体に、何か付いている。
瑞生「何だこれ…」
瑞生はそれを手に取って見てみた。
日の光に照らされて、キラキラと反射して見える。
瑞生「これは…蜘蛛の糸…?」
それは細い蜘蛛の糸。
それが勇者達の体にいくつもまとわりついている。
仁人「うっ…」
すると、勇者達は意識を取り戻して起き上がった。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年9月23日 19時