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宿屋で一夜を過ごした勇者達。
空が白み始め、まだ日も登っていない時間に、彼らは宿屋の外から聞こえる大声で目が覚めた。
「神隠しじゃー!」
外に出ると、村人が集まっているのが見える。
中には手を合わせるものや、湖の古墳の方に向かってひれ伏して拝むものの姿もあった。
仁人「一体、何があったんです?」
村人「この家の主人がいなくなったんだ…。この辺をいくら探してもいないし、突然姿を消すなんて今までなかったのに、これは神隠しに違いない…」
「祟りじゃ…」
「神様がお怒りなんじゃ…」
村人は口々にそうつぶやいている。
琉弥「確か、宿の受付の人があの古墳の神様の仕業って言ってたよね」
仁人「行ってみるか…。あの古墳へ…」
瑞生「そうだね…」
仁人たち七人は、村人の間を縫って、昨日見た湖に囲まれた古墳へと向かった。
静かな水面の上に浮かぶ古墳。
神聖な風が吹き抜けるだけで、昨日と何も変わりがないように見える。
磯には小さな船が停泊していた。
仁人「この船に全員は乗れないな…」
柔太朗「ここは俺の出番の様だな」
柔太朗はそう言うと、湖の方へ両手を差し出した。
冷気が辺りを包み込んでいく。
そして、湖を凍らせようとしたまさにその時。
「いけません」
凛とした声が勇者達の背後から聞こえてきた。
そこに立っていたのは、昨日出会った神楽という巫女の少女だった。
神楽「あの古墳には神に仕えるもの以外、立ち入ることは禁じられています」
太智「か、神楽ちゃん…」
昨日とは打って変わって険しい表情を浮かべる神楽。
神楽「すみません、えらそうなことを言ってしまって…」
仁人「いや、こちらこそ申し訳ない。勝手なことをしてしまって…」
神楽「いえ…。あなた方は、今朝の神隠しの事が気になってこちらにいらしたんですね?」
仁人「はい。村の人たちは皆、この古墳に眠る神様が怒って、神隠しをしていると…」
その言葉で、神楽は肩を落として悲しそうな表情を浮かべた。
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作者名:milkssss | 作成日時:2019年9月23日 19時