三十九輪 ページ40
『ン…。』
甘く響いてくる声を聞きながら、そうしとること数秒。
いや、数分は経っとったかも知れん。
そう思える程こってりとした時間が過ぎ、やっと唇を離す。
私とリナを繋ぐ唾液の糸が、ほろりと崩れた。
『フフ。baiser、しちゃったネ。』
あ「…恥ずかしか。」
『何で恥ずかシイ?』
あ「恥ずかしいやろ。こんな所でキスするって。」
『ワタシ、恥ずかしい思わナイ。
好きな人の事好きって言って、
ラブをひょーげんして悪い事なんかナイ。』
あ「リナ、TPOって知らんか。」
『Oh!Time,Peace,Occasionネ!』
あ「Placeな。」
時刻は七時を少し回った所。
そろそろ別れな、私もリナも怒られる。
でも、キスしたからか、彼女と別れたいと思えんくなってきた。
それどころか、もっと隣にいて欲しい。
そう思う様になってきたんや。
あ「リナ、そろそろ入り。
今は夏や言うても、この時間からは寒うなるけん。」
『Oui.今日は、アリガト。楽しかったヨ。』
いつもの明るさが戻らんまま、淡く微笑み掛けるリナ。
何で、そんな風に笑うんよ。
余計に離れとうなくなってくるやろが。
私は敢えて、彼女の方を見ん様にして持っとった鞄を押し付ける。
彼女が受け取ったのを確認して、一言
また明日、と呟いた。
返事も聞かずに歩き出そうとした瞬間、
その後ろから大きな声が響く。
いつも通りの、快活としたリナの声。
思わず振り向き、彼女を見る。
『アルト!Bye bye!』
彼女は手にしとったキューピッドのカードに
一度口付け、それををひらひらと振った。
それを見て、余計に顔に熱を篭もらしたままその場を離れた。
こんな顔、リナになんか見したく無か。
リナとの距離が急激に近付いた次の日。
自分の机に荷物を置き、二人の元に向かう。
何事も無かったかの様に、リナは私に挨拶してきた。
『アルト!オハヨー!』
あ「…おはよう。」
何で普通でいられるんよ。
私なんか、まだドキドキしとるのに。
稲「聞いたよ。両想いだったんだって?
良かったじゃん。」
いや口軽過ぎるやろこの娘。
せめて二人揃ってから言ってや。
稲「顔赤っけ。茹でダコみたい。」
あ「わ、わまかしい…!」
稲「で、どうすんの?二人、付き合うの?」
あ「何でそんな嬉しそうなんよ。」
稲「だって嬉しいじゃん。自分の友達が二人揃って両想いだったんだぞ?」
あ「悔しいとか、思わんの?」
稲「友達の恋愛関係を妬む程、俺は歪んでねえよ。」
稲野ちゃんはこれ以上無いと言う程の良い笑顔でそう言った。
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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
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