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三十二輪 ページ33

色々考えている内に、次の日が来てしまった。
昨日からの考え事にまだ思案しながら、教室のドアを開ける。
稲「おはよ。」
『オハヨー、アルト!』
あ「…ああ、おはよう。」
『アルト、最近元気ナイ。どうシタノ?』
あ「…大した事や無いけん。何でも無かよ。」
この返しも何回言ったやろ。
私は鞄を漁り、稲野ちゃんへのお礼の品を取り出す。
あ「稲野ちゃん、これあげる。」
稲「今日は誕生日じゃないんだけど。」
あ「違う。一昨日の水泳大会のお礼や。」
稲「…俺、大した事してねえぞ?」
あ「私が医務室にいた時に、一緒にいてくれたやろ。
アンタがいんかったら心細かったけん。」
稲「…変なの。友達心配して悪いかよ。」
その顔は、どこか嬉しそうや。
あ「そんな事、無か。ありがとうって言うほんの気持ちや。」
やっとお礼が、私の手元から離れた。
稲「こんなの用意しなくて良いのに。
でも、…ありがと。」
『イナノ、それ何?』
稲「何だろうね。ALTO君、開けていい?」
あ「うん。良かよ。」
びりっ、ごそごそ。
丁寧に包まれた紙袋の封を開け、中身を取り出す。
出てきたのは、人狼のカードゲームセット。
人狼が得意な彼なら、上手く使ってくれるやろう。
そう思って選んだ物や。
最初は本を買おうと思っとった筈やのに、
気が付いたらこっちを買っとって。
まあ、私も人狼は好きやし。
自分用に同じ物をもう一組買うぐらいやけんな。
稲「じゃあ早速、これで遊ぼうぜ。」
あ「今から?もうすぐホームルームやのに?」
時計を確認し、そう返す。
稲「…あ、本当だ。じゃあ昼休みにやろうぜ。」
あ「それやったら良かよ。三人やったらワンナイトやね。」
『ワンナイト?』
あ「ああ、人狼ってゲームのルールの一つや。
平たく言うと、少ない人数で出来る人狼の事やな。」
『JINRO?』
あ「じんろう。誰も酒の銘柄の事は言っとらんけん。」
そうツッコんどる間に、チャイムが鳴ってしまった。
私は急いで自分の席に戻り、横のフックに鞄を引っ掛けた。
リナにもプレゼントがあるって言う事は、敢えて言っとらん。
贈る物が稲野ちゃんのとはモノが違うけん、
サプライズとして渡す事にしたんや。
そう決めた途端、稲野ちゃんに渡す時には無かった緊張感が
じわじわと私の心の中を蠢き始めた。
実物は家に置いてきとる。
あんなん、学校に持って来れる訳が無か。
私は筆箱からシャーペンを取り出し、二回程ノックした。
傍らにはメモ帳。
さて、この後の計画を立てとこうか。

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螢羅(K-Ra)(プロフ) - 緑月翡翠さん» いつもありがとうございます!フランス語を取り入れるのは初めてだったのですが、書いていたら楽しくて楽しくて…!毎日更新、出来れば良いんですけどねえ…。貴重なご意見ありがとうございます! (2017年4月20日 7時) (レス) id: 575549c323 (このIDを非表示/違反報告)
緑月翡翠(プロフ) - 完結おめでとうございます!フランスや花言葉は私も大好きで、とても良かったです…!読者としては毎日更新が嬉しいのですが、ご多忙なようなので時間があれば、という形がいいと思います。次作も楽しみにしています!長文失礼しましたm(__)m (2017年4月20日 6時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年3月3日 20時

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