検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:4,335 hit

16ページ From:俺 ページ17

先生方との簡単な確認を済ませ、俺も時間まで休憩に入らせて貰う。
と、その前に。
教員用のバンガローに荷物を置きに行かないと。

生徒達が泊まる所からは少し離れた所にあるバンガローに着くと、
ドアを開けて中を確認する。
簡易的なドールハウスを思わせるそこは、
普段眠りが浅い俺でもすぐに夢の世界に向かえそうだ。
息を少し吸っただけで木の薫りが体中に巡っていく。
蒸し暑いのに、それが気にならない程心地良く感じる。
荷物を置いた近くには、一人分の寝袋が用意されていた。
それがよりキャンプらしさを際立たせているので、
俺も林間学校に来たんだなと改めて感じる事が出来た。
そろそろ出ようかと思ってドアを開けると、
その向こうでtowaco先生がこちらを見ていた。
や「うわっ…!」
驚いてしまう俺とは別に、彼は眉一つ動かしていない。
と「…人の顔見て驚かはるなんて、酷いですね。」
や「あ、いや…!ごめんなさい。」
と「良いですよ。私が気配に気付かれへんのはいつもの事やさかい。
その反応も慣れてますから。」
彼はそう言ってくれるが、彼の事だ。
俺に気を使って嘘でも言っている様に思える。
ドアから離れると、先生は大きな荷物を
引き摺りながらバンガローの中に入ってきた。
や「驚いてしまったお詫びに手伝いますよ。」
と「おや、おおきに。助かります。
何しろこれ、普通に持つだけでも肩が凝るんですわ。」
確かにちょっと重い気がする。
何が入ってるんだろう?
明らかに三日間泊まるには大き過ぎる代物だ。
それはともかく、towaco先生が泊まる
スペースまで二人で一つの荷物を運ぶ。
や「ここでしたよね。よい…しょっと。」
と「ふう。手伝うてくれはったから助かりましたわ。ほんまおおきに。」
ゆったりとした京都訛りの関西弁が、
低音ボイスに乗せられて俺の耳を通っていく。
これは確かに女子からの人気が高い筈だ。
彼が大きな鞄から和柄の水筒を取り出して、その蓋の内側に中身を注ぐ。
それをごくりと飲んで、彼は一言付け足した。
と「やはり、一仕事終わった後のコレは格別やわあ。」
や「中身真っ黒ですね。今度こそブラックコーヒーですか?」
と「いえ、墨汁です。」
飲み物持ってなくて良かった。
確実に吹き出してたよ。
建物の材質が天然の木だから大変な事になる。

先生と別れ、タバコを吸う為に人気の少ない喫煙所に向かう。
建物の中のほんの一角にあるそこは、
俺にとってはオアシスになるだろう。
さて、吸い終わったら何しようか。

17ページ From:私→←15ページ From:私



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.6/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
7人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:螢羅(K-Ra) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月19日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。