空から落ちてきた天使3 ページ22
そして迎えたクリスマス
俺は、仲間達と幸せな24時間を過ごした
「藤ヶ谷、お疲れさん。」
「お疲れ…」
「あ、あのさ、この後…飯でもどう？」
「ぁ…」
「…あ、いや、予定があるならいいんだ。疲れてるトコ、ごめんな！」
突然の誘いに一瞬パニックになった
小さな戸惑いを敏感に感じ取って、すぐに身を引いた北山を俺は引き留める事ができなかった
ひろとの最後の夜だから
息を切らし、急いで自宅に戻ると
ひろはベランダで空を眺めていた
「ひろ…」
「あ、太輔、おかえりなさい！」
いつも通りふわりと笑うひろに、俺は言葉を返せなかった
「……もう…行っちゃうの…？」
「うん。」
「そっか…」
引き留めたい
けれど、それは不可能だ
ひろの本当の居場所はここじゃない
初めから1年だけと分かっていた事…
「太輔…」
「ん？」
「俺……すっげぇ楽しかった！」
「ひろ…」
「落ちた場所が太輔んとこで良かった。」
「…」
「俺、太輔に出会えて良かった。」
「…ん。」
「太輔は？…俺といて、楽しかった？」
「…楽しかったよ。…ひろと出会えて幸せだった。」
震える声で一生懸命に伝えたら、ひろは、えへへって照れたように笑った
「俺ね、太輔にお礼がしたくて。」
「…お礼なんて…」
「でも…俺には、太輔にあげられる物は何もない…」
「ひろ…」
「だからね、太輔の願いを一つだけ叶えたいと思うの。」
「…俺の願い…？」
「寂しがり屋さんなのに、ちゃんと伝えられない不器用な太輔に。俺から、勇気とチャンスをあげる。」
「勇気と…チャンス…？」
「俺はまだ見習い天使だから、これが限界なんだ。後は太輔次第。」
「…ひろ…？それは…」
ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ
「…ほら、お客さんだよ？」
ひろの言葉に促されて覗いたインターフォン
そこには、俺の想い人が映っていた
「き、北山っ！？」
『えっと…来ちゃいました…。』
「ちょ…い、今開けるっ！」
慌ててロックを外して、戻ったベランダ
そこに…ひろの姿はもうなかった
「ひろ…」
再びなったインターフォンに開いた扉の向こう…
「悪ぃな、こんな時間に…。えっと…近くで飯食ってたんだけどさ、雪が降ってきて……藤ヶ谷に…俺…」
「会いたかった。」
「ぇ？」
「北山と一緒にクリスマス、過ごしたかった。」
「……俺も。」
「……メリークリスマス、北山。」
END
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作者名：MISA
| 作成日時：2018年3月2日 10時
