花の色は【轟焦凍】 ページ11
「……ごめんね、しょーちゃん。」
私がそう言うと、彼は苦しそうに笑った。
.
私の個性は寿命を削って、人を治癒する。
いつか死ぬとしても、ヒーローになりたいと願った。
決心した。
………つもりだったのに。
どうして、後悔してんのかなぁ。
.
プロヒーローになって10年。
身体が上手く動かなくなった。
(…まだいける、まだ)
２０年。
耳と目がよく聞こえなくなった。
(……もう少しだけ)
30年。
皺も身体ももうボロボロだった。
(………やりたい。けど)
限界だった。
.
「来てくれてありがとう、しょーちゃん」
もう細い枯れ枝のような手を握る私の恋人。
醜い姿を見せたくない。
でも彼に会いたい。
葛藤した私の心も知らず、彼は現れた。
「…正直、引退してくれて安心した。」
「……ん、私もかな」
「お前はヒーロー続けたかったんじゃねぇのか」
彼は怪訝そうだった。
ねぇ、しょーちゃん。
私は老いてく体が怖くて鏡ももう見れないけど。
貴方から私はどう映ってる？
もう枯れた花？
「私、ちゃんと分かってたつもりだったの。
……でも、駄目だなぁ。
死ぬのが、意外と凄く怖いみたい。」
そう乾いた笑みを零すと彼は立ち上がって、私を真っ直ぐ見つめた。
「…俺は、止めただろ。
お前の個性はただでさえ戦闘的じゃない。
お前の代わりに俺が沢山の人を救うからっ、
だからお前はもう戦うなって！
そう、言っても止まらなかったのはお前じゃねぇか！！」
彼は悲痛に叫ぶと、私へ縋り付いた。
「…痛いよ、しょーちゃん」
「、悪い」
謝りながらも彼は私を掴んだ手を離そうとはしなくて。
「あのね、しょーちゃん。
花はいつか枯れてしまうものだから。」
昔、登下校の途中に置かれていた花束を思い出す。
故人を偲ぶための花。
でもそれもすぐに枯れていったんだ。
「でも、悲しいことじゃないんだよ。
私の代わりに、新しい芽が芽吹くから。
次はきっと私よりも綺麗で力強い優しい花が咲くから。」
「……何の話だ？」
「上手くいかないかもしれない。
だから言わないでおこうって思ったんだけど。」
「だから何の話…」
「体外受精って知ってる？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 280人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鬱ネコ(プロフ) - 璃月さん» コメントありがとうございます！リクエスト、続編の方で死柄木さんで書かせていただきました。ご不満がありましたら書き直しますのでお申し付け下さい。ありがとうございました！ (2018年12月14日 22時) (
レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)
鬱ネコ(プロフ) - みすみさん» 競技かるた部なんですね！かっこいいです。ありがとうございます~！リク、遅くなりましたが書かせて頂きました。続編の方なので良ければ観覧お願いします。コメントありがとうございました (2018年11月26日 23時) (レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)
鬱ネコ(プロフ) - Runaさん» ありがとうございます！切ない話を書きたい、って常日頃思っているので、そう言って貰えると嬉しいです。好きだなんて光栄です。続編でもよろしくお願いします！ (2018年11月9日 23時) (レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)
Runa - トガちゃんの話好きだななぁ･･･ちょっと残酷だけど、何かトガちゃんの報われない想いとか、切なくて結構好き。続編でも頑張って下さい。 (2018年11月9日 20時) (レス) id: 3e6d8cfb03 (このIDを非表示/違反報告)
鬱ネコ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» ステイン様続編の方で書かせていただきました！遅くなり申し訳ありません。ご不満がありましたら、書き直しを仰ってください！ (2018年11月8日 19時) (レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鬱ネコ | 作成日時：2018年5月26日 14時
