episode17 ページ18
薄れていた意識が一気に引き付けられた。
感覚のなかった体に、徐々に重みを感じてくる。
目を開けた。
周りがバタバタと騒がしくなる音が聞こえた。
掠れた視界がはっきりとして、私は見覚えのある空間にいることに気づいた。
ここは、病院。
現実とはかけ離れた雰囲気に、今自分がどこにいるかすぐにわかった。
「A!」
誰かに自分の名前を呼ばれ、頭を横に向けた。
そこには三奈と、切島と、もう1人。
「上鳴くん……?」
彼がいた。
「ちょっと!私が呼んだのに、なんで上鳴の名前言ってんの」
三奈が怒っている顔が見えた。
なぜだか安心して、顔がほころんだ。
「ごめん三奈」
「もー。今お医者さん来るから、ちょっと待っててね」
「うん」
よく考えれば、なぜ私はここにいるのだろうか。
わからなかった。
ただ、胸に何かが引っかかってて、嫌な夢を見た気分。
しばらくして、前お世話になった時と同じ医者が病室に入ってきた。
「よく目を覚ましてくれた」
「あ、はい」
「ところで、今自分がどういう状況にあるか、記憶にあったら自分の口で説明してほしい」
医者に言われた通り、私は自分の記憶を辿ってみた。
そして、あのおぞましい光景が頭をよぎった途端、全てを思い出した。
「あ……」
私は声が出なかった。
同時に、目から涙が溢れ出てきた。
「A!?どうしたの!?」
三奈が心配して椅子から立ち上がったのを、医者は止める。
「記憶はあるね。話せそうにないなら無理に話さなくていい。記憶があるかどうかの確認だけしたかった」
胸に引っかかっていた何か正体がわかった。
これは悪い夢なんかじゃない。
現実だ。
「大丈夫、もう君はヒーロー達に助けられた。そのことをよく理解して、ゆっくり深呼吸して」
言われた通り、私は皆がいる安心感を胸に抱いたまま、深呼吸をした。
一気に心が落ち着いた。
「よし。じゃあ今から僕は君の体に何が起きたのか話さなければいけないんだけど、聞けそう?」
私は頷いた。
「ここにいるお友達は退出してもらった方がいいかな?」
私は横に首を振った。
「ここにいてもらいたいです」
皆も黙って話を聞いてくれていた。
「まず簡潔に言うと……」
医者が続きの言った途端、その場にいた皆が固まるのがわかった。
__與さんの個性は、無くなった。
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作者名：さくら | 作成日時：2020年5月26日 9時
