1、いつもの日常とトラブル ページ3
「………もう夜か」
窓から真っ暗になった空を見ながらひとり呟くと、僕はベットから重い腰を起こした。
なんだか懐かしい嫌な夢を見ていた気がする。この村に来てから今日で丁度五年が経った。今年で僕は十七歳になる。
実の父に吸血鬼の本拠地から遠く離れた平凡な村へと強制的に移転させられたのだ。
いつかはそうなると思っていた。父は吸血鬼の中でも上位吸血鬼である貴族。かなりの強さと権力を持っている。その分プライドも高く、僕は失敗するたびによく暴力を振るわれた。
自分の顔に泥を塗る僕の存在は邪魔でしかなかったのだと思う。
平凡な村と言っても僕の扱いは酷いものだった。馬鹿にされ、侮辱され、差別され続けた。
時には暴力を振るわれることもあった。
でも、ここで暮らし始めて一週間…一ヶ月…一年…と長い年月が過ぎていくうちに、ここでの扱いにもすっかり慣れてしまった。
相変わらずここに僕の居場所はないけど、ここには僕に期待している人も血を吸えと強制してくる親も居ない。そう考える前よりも楽な暮らしが出来ているのかも知れない。
でも、やりたくない仕事を毎日押し付けられるしやっぱり憂鬱だ。
「はぁ、そろそろ行かないと…」
僕はそう自分に言い聞かせ、重い足を動かして玄関の扉を開いた。
◆
静寂な森の中で自分足音が響く。風に吹かれ草木がカサカサと音を立てて、動物の鳴き声が聞こえてくる。
こうしているとまるで別の世界に迷い込んだ様に感じがする。
一般吸血鬼よりも弱く劣っている僕に課せられる仕事は、村の周りの見回りや門番、雑用、そして捕らえられてきた人間の監視だ。
この村は森に囲まれているが、時より人間が迷い込むことや近くの山から熊が降りてきたりすることが多々あるのだ。だからこうして毎日森を歩いて異常がないか確認しなければならない。
…結構歩いたな。
気づけばかれこれ数時間。月も高くなってきた。これくらいにしてそろそろ戻ろう。
遅くなると暴言に加えて無駄に殴られてしまう。
そう思って、体を方向転換したときだった。小さい影が一つ横から飛び出してきた。
「…!?」
いきなりの事で反応出来ずに飛び出してきた何かとぶつかる。
「きゃっ!」と発せられた短い悲鳴と共に後方に体が傾き、バランスを崩した。
そのまま倒れて激しい尻餅をつく。
「いっ…た…」
お尻の痛みに耐えながらぶつかってきた何かに目を見やった。
…次の瞬間、僕の眼に映ったのは怯える人間の少女だった。
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奏音♪(プロフ) - seijakariさん» アカウント変えたのでよろしく!!そしてTwitterも始めました!!小説頑張ってね!! (2020年2月15日 23時) (レス) id: 8c92be2f2c (このIDを非表示/違反報告)
seijakari(プロフ) - 冬神黒花さん» コメントありがとうございます 参考にして考えてみます (2019年12月22日 18時) (レス) id: 241541f10b (このIDを非表示/違反報告)
冬神黒花 - ヴァンパイア(吸血鬼)…格好いいですよね!主人公の名前を変えられる様にしても良いかもしれませんよ!上から目線がスミマセン! (2019年12月22日 15時) (レス) id: d6d929f7e2 (このIDを非表示/違反報告)
正邪仮 - ありがとうございます! (2019年6月21日 11時) (レス) id: 1884bddac7 (このIDを非表示/違反報告)
奏音♪(プロフ) - 正邪仮さん» 私にも手伝える事があるなら言ってね! (2019年6月20日 17時) (レス) id: ac6889db09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:seijakari | 作者ホームページ:http://uratuku/seijakari
作成日時:2018年5月21日 13時