三十四 ページ36
鉢屋三郎
あれが今回の天女。
まず目を見張ったのは、小松田さんとにこやかに昼飯を食べていること。
好きな食べ物とか、趣味とか、そういう他愛もない話しをしている様子だった。
しかし、まるで周りを気にしていない。
あいつにとって、この中で生きているのは小松田さんのみじゃないのか?
それ以外は、まるっきりただの風景の一部だ。そんな感じがした。
朝もそうだったけど、あいつは私たちがどんな目で見ても、その視線を何とも感じていないようで、普通なら逃げ出したくなるような殺気の中にいても、それを何倍にもして跳ね返してしまう。
尾「なぁ、あの天女って」
鉢「わかってるよ。言われなくても」
雷「すごいよね…」
天女たちの方は向かず、小さな声でそれだけ言い交わした。
私には分かる。
視線は、怖い。
慣れていない者が、急に大勢の前にさらされて、好奇の目を向けられて、そんな様々な感情を浴びたら、それは恐怖だ。
逆に、自分の心の奥底に隠してしまってある物を何者かに見透かされてしまうような気がして、どんな小さな壁でもいいから、自分を保護して見られないようにしてくれる物を探して隠れたくなる。
が、少なくとも、今のみんなの感情は小松田さんに対する「同情」と「疑問」。そしてあの天女に対する「恐れ」と「好奇」が大多数だろうな。中には、小松田さんに何をした!というような「怒り」もあるが。
でも彼女にはそれは届いていないようだ。
それどころか
『小松田さんは、犬は好きですか?』
なんて普通の会話に見せかけて、あの夜のことを全て見透かして、私たちに対する皮肉を言っているのだから。
おっと、初めて私たちは彼女の中に存在したんじゃあないか?
私はひとりほくそ笑んだ。
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まる(プロフ) - いおらんさん» ありがとうございます!コメントとても嬉しくて励みになります! (2019年8月2日 19時) (レス) id: 3f7caaff83 (このIDを非表示/違反報告)
いおらん(プロフ) - とても話が好みで楽しく読ませてもらってます(^^)更新頑張ってください! (2019年8月2日 12時) (レス) id: 60ac9a4c80 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 桜ノ夢さん» ありがとうございます!初めての作品なのでとても緊張しながら書いているのでとても嬉しいです。タイトルについてはこれからのストーリーをお楽しみにしていてください! (2018年11月18日 19時) (レス) id: 3f7caaff83 (このIDを非表示/違反報告)
桜ノ夢 - まるさん!この作品とても面白いですね!私、これ読んだ後、「ふぅ〜面白かった…な…え!?何この題名!?夢主消えるの!?」って思いましたから← (2018年11月13日 22時) (レス) id: 3556d0a5e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まる | 作成日時:2018年11月13日 21時