君がいなくなる前に

九 ページ11

今のところ、私が教えた事は名前と年齢のみ。しかし、次に聞かれた質問に私は冷や汗をかいた。



「こちらに来る前に、何をしとったのじゃ？」



何、と言われても…。



「大丈夫じゃ。何をしてても儂らには関係の無いこと。ただ、知りたいのじゃ。教えてくれぬか？」




『…わかりました。私はあの山に来る前、殺されました』


ふと張り詰めていた空気が揺れるのを感じた。しかし口から出てしまった言葉はつらつらと。



『仕事終わりに家に帰っている時に恐らく刺されてさらわれたんだと思います。気付いた時にはどこかの倉庫の床に転がされていました。

気絶したままだったらよかったのに、意識が戻って来てしまって、酷い痛みでした。

服はボロボロだし痛いし、逃げようと思ったけど、血が出過ぎてるのか腱を切られたのか知らないですが動かなくて…私の意識が戻ったことに気付いた犯人は、また私をひたすら刺しました。


痛覚が無くなって、視界が赤くなった頃に、そろそろ死ねるかと思ったら、火をつけられました。油をかけられて。

火で焼かれるなんて、人間生きてて無いですよ。切られるのとか、叩かれるのとかとは全く比べ物にならないですね、あれは。

暫く焼かれたら、意識も無事無くなって、ちゃんと死ねました』



ざっと話すと、改めて酷い死にだなぁと思った。
だって普通の人間刺されないし焼かれない。焼かれても日サロとかだけだし、刺されても針灸の針くらいだと思うし。



「刺されて焼かれてか…踏んだり蹴ったりじゃな」

『そうですね、本当…』



そういえば昔私は一度、焼死体を見たことがあった。あれは酷かった。焼死体なんて見るもんじゃないと思ったのに。

ミイラ取りがミイラになる、なんてことわざ思い出して自分で自分を馬鹿にした。

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