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彼の気持ちを聞いた私がとった行動は聞こえないふりをするというなんとも大人げない対処だった。
なにか言いたげな彼に被せるように
『……遅いし、そろそろ帰ろっか』
と告げて彼の優しい手から離れる。
帰り道、気まづくならないように私はずっと明るく振る舞った。
弟に……ただの隣人に……戻るための帰り道。
今日みたいに過ごすのは最後……
そう決めて彼にお礼を告げる。
はやる気持ちで扉を閉めきる直前、彼の手が滑り込んでくる。
(ガッ)
「Aさん、あのっ…!連絡先教えてくれませんか?」
『えっ…?』
「今日みたいに出かけてはぐれた時困るし…
あっ!あとAさんから連絡きたら仕事頑張れそうだからたまに渇いれてくれたら嬉しいな〜って思って………」
……礼王くんはいつも優しくてずるい。
私はあなたの気持ちをなかったことみたいに扱ったのに……
もう終わらせるつもりでいたのに……
優しく歩み寄られて悩んでしまう自分がいる。
「だめ、ですか………?」
叱られた子犬のような目で見つめられる。
………
………
………ずるい。
いったいどこで覚えてきたの、、、
そんな隠し技………
内心狼狽えながらも平常心を保っているかのように振る舞う。
『渇なんて上手く入れる自信ないんだけど…笑』
「あ、もうっAさんからの連絡だったらほんとになんでも嬉しいんでっ!
何卒よろしくお願いしますっ!」
『……ふふふっ』
携帯をラブレターかのように差し出す彼が可愛くて笑いが止まらない。
ケラケラと笑う私を見て彼が
「Aさん、ひどいっ」
て顔をしかめて言うものだからさらにまたツボに入ってしまう。
きっと今なら石ころが転げてもおかしくて笑ってしまう。
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作者名:nao | 作成日時:2021年11月19日 22時