末っ子彼女は甘えない【センラ】

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センラside


「もしもーし。」


『…もしもし。』


「ふふっ。」


『キモ。』


「おい。」


ずっとそうだ。


付き合いだしたころからずっと、夜にこうして電話をする。


莉子からかけてきてくれたことは無いけれど、電話には必ず出てくれた。


風邪を引いた日も、俺が酔っぱらってた日も、どんなに遅くなっても、この電話だけは待っていてくれた。


「電話出んのはやかったな。」


『スマホいじってたから。』


「またまたぁ、まっとってくれたんやろ？」


『は？』


「すまん。俺が悪かった。せやからガチトーンだけはやめて、頼むから。」


口ではこんなこと言ってるけど。


たぶん、きっと、毎日この電話がかかってくるまでは寝ずに待っててくれている。


(…何ていうのは自惚れすぎかも知れんけど。)


嫌なことがあっても、歌枠できなくても、莉子の声を聞くだけで、それだけで1日のストレスがスゥーっと消えていって、頑張ってよかったなって、この時間が1日の中で１番幸せで。


「莉子。」


『…何？』


「ありがと。」


『…？』


「大好き。」


『…っな、に急に。』


「あ、今照れたやろ。」


『は？』


「だからガチトーンやめえって。」


(ふふっ、かわええなぁ。)


「じゃ、おやすみ。」


『ん、おやすみ。』


(ベッド行こ。)


『…お疲れ様、明日も頑張ってね。』


「…え、ちょ。」


画面には

【通話時間 21:23】

の文字。


(……っっ！今のは、反則…っ！)


その後しばらくベッドで悶えていた。


(東京、遠いなぁ。)


会いたい、なんて思ったりもするのだけれど。


声一つでこんなにも胸が苦しくなるのに、


毎日会えたら、毎日触れられたら。


(心臓破裂するわぁ…。)


どうやら俺は、思っていたより莉子のことが大好きなようだ。

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